診療科・部門

栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)の活動内容について

役割

aa-NST roll栄養サポートチーム(以下NST)は、院内で活動している医療チームのひとつであり、患者さんの生活の基礎となる「食・栄養」に対する取り組みをしています。NSTは、①当初の栄養状態の評価を行って低栄養状態の患者を抽出し、②栄養治療計画を立案し、③その治療介入により栄養療法が適正に行われているか再評価します。必要があれば幾度も修正しながら、主治医をはじめメディカルスタッフ全体に対して、栄養療法内容の指導や提言を随時行っています。

発足

aa-NST conferenceNSTは、現在稼働中の当院医療チームの中でも活動歴は長く、2003年にランチミーティングとして職員が症例検討が必要な患者について意見交換を行う形態から始まりました。2005年から現在の全科型病棟回診や症例検討により入院患者の栄養管理を行っています。

構成メンバー

チーム代表 消化器内科 藤原明子
犬飼道雄内科医長、和田麻美管理栄養士をはじめ、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーなど多職種で定期的に症例検討会や病棟回診をしています。それぞれ専門職の立場から、多面的に意見交換を行っています。
当院では、日本静脈経腸栄養学会認定のNST専門療法士は管理栄養士3名、看護師3名、薬剤師2名、臨床検査技師1名、(2018年4月現在)が在籍しており、今後もさらに増員予定です。
なお、各病棟にはNSTリンクナースを1~2名を選定していて、随時病棟でNST介入の必要な症例を拾い上げ、チーム回診時に症例提示を行います。

対象患者

活動状況

入院部門

病棟回診

週2回、火曜日の午後と金曜日の午前に病棟回診を行い、1年間の回診回数は80回以上に及びます。のべ1,000名以上の患者さんの栄養評価を行い、食事内容の把握や変更などの治療方針に関わっています。また、NSTリンクナースにより抽出された低栄養患者さんや主治医よりNST介入依頼を受けた患者さんに対し、多職種による症例検討会を定期的に開催しており、検討症例は年間700例以上です。
チーム回診時に必要があれば、検査やリハビリテーションを勧め、注射や内服薬の内容を見直したり、主治医へ提案しています。また、食べ物の嗜好を聴取して食事を工夫したり、在宅療養予定であればご家族へ食事療法の指導を行っています。
2017年6月より歯科医師1名も加わり、「歯や口腔内の問題を解消し、口から美味しく食べる」ことを目指しています。

地域医療連携

入院患者で中心静脈栄養や経腸栄養を実施している患者の転院時には、栄養管理情報提供書を作成し、医師や看護師、理学療法士の診療情報提供書類とともに添付し、栄養管理についても具体的な内容が情報共有できるようにしています。

院内安全管理

経腸栄養を中心として、経腸栄養用ポンプやチューブの選別や使用法の指導、マニュアル作成にもNSTが関わっています。

外来部門

術前サポート外来

s-b-koizumi近年、ERAS(Enhanced recovery after surgery)が術後回復能力を強化する包括的手法として注目されています。当院では侵襲の大きい手術も日々行われているので、術前術後の栄養管理は重要と考えています。免疫栄養を担う物質のひとつであるグルタミンは、侵襲期の必須アミノ酸として腸管免疫を高める役割を果たしています。
NSTでは、2013年7月から肝胆膵の手術患者を対象に術前術後栄養サポートを開始しました。2014年7月からは、主治医や管理栄養士だけでなく、麻酔科医・リハビリ医・外来看護師・手術室看護師・薬剤師・理学療法士を加え、食道がん・肺がん患者さんも対象とし、体系的に術前サポートを行っています。外科外来で手術予定が決まった後、術前サポート外来として多職種による問診や術前リハビリテーション、栄養療法を開始します。
術後の体重減少と栄養不良状態の軽減を目指して、グルタミンと善玉菌と水溶性食物繊維を組み合わせて投与し、術前から腸管免疫を高めることを考えています。この際に同意いただけた患者さんには、術前1週間に摂取する栄養食品を購入して摂取していただいています。
術前サポートでの当院の実績として、胸腔鏡下肺葉切除術を施行した肺がん患者さんのうち、術前サポート未実施群(19例)、術前リハビリテーションのみ実施群(19例)、術前の栄養療法とリハビリテーションを実施した群(19例)を比較検討したところ、各々在院日数が、14.7日、11.6日、9.5日であり、術前サポートを実施した群で在院日数が短くなっていることが最近明らかとなりました。
今後も術前サポート外来など多職種で協力し、円滑な手術治療のお手伝いができるように努めたいと思っています。

炎症性腸疾患(IBD)勉強会の運営

aa-IBD study meeting潰瘍性大腸炎やクローン病を中心とした炎症性腸疾患患者を対象に勉強会を定期的に開催し、2007年以降計19回実施しています。この勉強会では、栄養療法だけでなく、治療や日常生活指導など多岐にわたる内容を取り扱っています。

IBD勉強会のページはこちら

医療スタッフへの知識の普及・共有

aa-NST study meetingNSTリンクナースは年単位で交代制となっており、月1回実施されているリンクナースによるNST勉強会に出席し、院内での栄養管理の一元化に役立てるとともに、知識の共有や看護全体のレベルアップにつなげています。
研修医をはじめ、医師やメディカルスタッフ全体への教育、専門とする科を問わず全科に共通する認識として、臨床栄養に関する知識を深めることを目的とし、栄養カンファレンスを年2回実施しています。