臨床工学科
臨床工学科では、生命維持管理装置(人工透析装置、人工呼吸器、麻酔器、補助循環装置、ペースメーカ、除細動器など)の操作および保守管理を行っており、21名の臨床工学技士が血液浄化部門(血液浄化療法室・腎臓病センター)、CE室、手術室、吉備病院(透析室)に配属しています。2017年3月からは当直体制をとっており、365日24時間いつでも医療機器の管理や臨床支援に対応し、医療チームの一員として活躍しています。また、専門性を高めるため積極的に学会発表や認定資格などを取得しています。
血液浄化部門では、国体町8階にある血液浄化療法室と外来センター病院8階にある腎臓病センターに分かれて業務をしています。透析ベッド数は血液浄化療法室が12床、腎臓病センターが37床あり、またICU・HCUに個人用透析装置2台、アフェレーシスモニター2台を有し、各種血液浄化療法を行っています。適宜スタッフを入れ替えて、どちらの施設でも血液浄化部門すべてのスタッフが下記に示すような業務に対応できるよう努めています。
CE室では、医療機器の中央管理を中心にME(管理)機器の点検・修理を行っています。その他にも、医療機器を使用する治療の臨床支援や、人工呼吸器の安全点検・操作・呼吸サポートチームとしての活動を行っています。また、病棟で使用する医療機器の勉強会を看護師や医師へ行っています。
手術室では、手術で使用する医療機器の手術支援や保守管理を行い、手術が円滑に行われるよう技術提供に努めています。手術支援は、内視鏡外科手術のカメラ操作、整形外科インプラント手術の立会い、補助循環装置(PCPS、ECMO)や自己血回収装置、レーザー手術装置、手術ナビゲーションシステム、人工膵臓などを行っています。保守管理では、使用前点検、日常点検、定期点検、滅菌前点検を行っています。
吉備病院では、主に人工透析室と医療機器の管理を行っています。人工透析室では人工透析装置の管理・定期点検・修理と、透析液の水質管理を行っています。機器管理では定期点検や修理、人工呼吸器の巡回点検や院内研修を通してスタッフへの教育を行っています。
血液浄化業務
血液透析(HD)、血液濾過透析(HDF)、血液濾過(HF)、オンラインHDF
慢性(急性)腎不全の患者さんに、血液透析を行います。
アフェレーシス療法
血漿交換、血液吸着、血球成分除去療法、胸水・腹水濾過濃縮(再静注)法など病状に合わせた各種血液浄化療法を施行します。
出張血液浄化
状態が悪く、血液浄化療法室まで来ることができない患者さんに、ICUやHCUなどへ装置を持ち込み血液浄化療法を施行します。
水質管理
血液透析には、大量の透析液を使用します。透析液や透析用水の水質管理は必須の業務となっており、透析液の清浄化をすることで、貧血の改善や長期合併症を予防できるといわれています。当院でも水質の清浄化に取り組んでおり、日本臨床工学技士会の水質清浄化ガイドラインVer.2.01の維持に努めています。
メンテナンス業務




医療機器管理業務
当院ではME機器管理システムHOSMA(ムトウテクノス社製)を用いて中央管理を行っており、HOSMAには120機種2,000台が登録されています。
また、定期的に病棟を巡回し医療機器の点検・修理を行っています。院内には中央管理していない機器もありますが、医療機器であればすべてCE室に点検・修理の依頼がきます。そのため医療機器業者との情報交換や、日々の勉強が欠かせません。


呼吸器関連業務


手術室業務
手術機器保守管理
手術室には多くの医療機器があります。これらの機器をHOSMAを用いて保守管理を行っています。使用前点検、日常点検、定期点検、滅菌前点検を計画的に実施し、また機器使用中のトラブル、故障にも迅速に対応し手術が滞ることがなく、安全に行えるよう努めています。
保守管理機器一覧表
- 麻酔器
- 麻酔用人工呼吸器
- 患者監視装置(麻酔モニター)
- 輸液ポンプ
- シリンジポンプ
- 電気手術装置
- レーザー手術装置
- 空気式マッサージ器
- 温風式患者加温システム
- 電動止血装置
- 除細動器
- 内視鏡手術システム
- 手術用顕微鏡
- 手術用ドリルシステム
- 高圧蒸気滅菌器
- その他 医療機器




手術支援
手術室では、手術で使用する医療機器の設定、操作などの技術支援を行っています。日頃より操作手順や対処法などの知識や技術を磨き、手術が円滑に進行するように心がけています。
- 内視鏡外科手術のカメラ助手(スコピスト)
- 整形インプラント手術立会い
- 人工膵臓の操作
- 植込み型ペースメーカの術中設定変更
- 補助循環装置の操作
- 自己血回収装置の操作
- 各種誘発電位検査
- レーザー手術機器の操作
- 内視鏡外科手術システム(装置)セッティング
- 泌尿器科:経尿道的内視鏡手術の立ち会い
- 手術用顕微鏡のセッティング
- 超音波吸引手術装置の操作
- 手術用ナビゲーションの操作
循環器業務
血管カテーテル業務
血管カテーテル業務では、心臓カテーテル検査(CAG)、冠動脈形成術(PCI)、末梢血管形成術(EVT)で使用される機器の操作等を行っています。
ポリグラフ
ポリグラフとは12誘導心電図・脈拍・血圧・SPO2(動脈血酸素飽和度)・心内圧・心拍出量を計測する機器です。ポリグラフより得られた生体情報から、検査や治療中に異常がないか観察しています。
IVUS(血管内超音波)

IVUSは超音波エコーを冠動脈内に挿入し、血管内を検査する機器です。IVUSを使用することで、血管の太さや病変部位の長さを観察できます。これにより血管内部の情報を得ることができ、治療部位の確認および治療方針の決定に役立てています。
IABP(大動脈内バルーンパンピング)

IABPは、心臓の機能が低下している患者さんをサポートするための補助循環装置です。カテーテルの先端に大きなバルーンがついており、そのカテーテルを下行大動脈に留置し、バルーンを心臓の拍動に合わせ拡張・収縮をさせることで冠血流量の増加や、心臓の仕事量を軽減させる効果があります。使用時にはIABPのセッティング、操作、管理を行っています。
PCPS(経皮的心肺補助法)

PCPSは経皮的に動脈と静脈へ挿入したカニューレから、静脈血を脱血し遠心ポンプと人工肺を用いて酸素化し、動脈へ送血する方法です。 急性心筋梗塞や急性心筋炎などの心原性ショック時の循環補助や、呼吸器外科手術時の肺補助(ECMO)を目的として用いられます。臨床工学技士は回路のセッティングだけでなく、24時間体制でポンプおよび人工肺の操作・管理を行います。
ペースメーカ業務
心臓には電気信号が流れており、この電気信号が途切れると徐脈性の不整脈になります。このような状態では息切れや意識喪失が起こる場合があるため、ペースメーカを使用して人工的な電気刺激を与え心臓を動かします。
ペースメーカには一時的な使用を目的とした対外式ペースメーカと、恒久的な目的の体内植込み型ペースメーカがあり、これらのペースメーカを使った治療の臨床支援を行っています。
また、ペースメーカを植え込んだ患者さんのフォローアップを目的とした「ペースメーカ外来」を毎月第1・3木曜日に行っており、この外来では医師の指示のもとプログラマーを操作してペースメーカが適切に作動していることや作動寿命のチェックを行い、必要があれば設定変更を行います。
RFA(経皮的ラジオ波焼灼療法)業務
RFAとは、肝臓にできた悪性腫瘍の治療法のひとつです。腫瘍を超音波エコーで観察しながら、皮膚を通して電極針を腫瘍の中心に挿入します。次にラジオ波という電流を通電させ、針の周囲に熱を発生させ、腫瘍を壊死させます。肝切除に比べ、非常に侵襲の小さいことが特徴となっています。
このRFAの立ち合いとして、ラジオ波発生装置を医師の指示のもと操作しています。


院内教育
院内スタッフに対して、医療機器を安全かつ確実に使用するため定期的に勉強会を行っています。
医療機器を安全に使用するためには、
- 機器の正しい使用方法と注意点を理解すること
- 安全な設備や環境で使用すること
- 安全性と機能を維持管理すること
これらの点を各スタッフへ理解していただくとともに、各機器の正しい取り扱い方法を習得できるようにサポートしています。具体的には、新人看護師対象のME機器勉強会(輸液ポンプ、シリンジポンプ、人工呼吸器、医療ガスなど)、新規導入機器の講習会、各部署から依頼された勉強会を積極的に行っています。
広報活動
CE通信:院内報として毎月発行
呼吸器ケア 2011年12月号、2012年3月号(メディカ出版)
職員が有する資格
- 臨床ME専門認定技士
- 血液浄化専門臨床工学技士
- 手術関連専門臨床工学技士
- 内視鏡専門臨床工学技士
- 認定血液浄化関連臨床工学技士
- 認定集中治療関連臨床工学技士
- 透析技術認定技士
- アフェレーシス認定技士
- 3学会合同呼吸療法認定技士
- 心血管インターベンション技師
- 医療機器情報コミュニケータ(MDIC)
- 消化器内視鏡技師
- 周術期管理チーム認定
- 第2種滅菌技士