もしも、がんになったら
医師から「がんです」と告げられた瞬間、頭の中が真っ白になってしまった方は多いと思います。
なぜ自分が、これからどうなるのか、治療に耐えられるのか、仕事は、家族は—次々と浮かぶ問いに圧倒されて、しばらく何も考えられなくなるのは、少しも珍しいことではありません。
がんについてある程度の覚悟があった方でも、いざ診断を受けると大きく揺さぶられることがあります。

まず伝えたいのは、焦らなくていい、ということです。
すぐに前向きにならなければとか、早く決断しなければと、自分を追い立てる必要はありません。
深呼吸しながら、ゆっくりと落ち着きを取り戻す時間も大切にしてください。
まず、頼れる窓口を知っておく
一人で抱え込まないために、まず知っておいてほしいのが「がん相談支援センター」です。
全国のがん診療連携拠点病院に設けられており、その病院に通っていなくても基本的に無料で相談できます。
「まだ何も整理できていない」
「何を相談すればいいか分からない」という段階から訪ねて構いません。
医師の説明が難しくて理解できなかったこと、仕事やお金のこと、家族への伝え方⸺ どんな悩みでも持ち込んでいいのがこの窓口です。話しているうちに、頭の中で絡まっていた糸が少しずつほどけてくることがあります。
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医師との対話を大切に
診察時間は限られており、その中で説明をすべて理解し、自分の希望を伝えるのは簡単なことではありません。
診察前に、気になることや聞きたいことをメモにまとめておくと助けになります。
症状がいつ始まったか、日常生活や仕事で大切にしたいことなど、思いつくことを書き出してみてください。
治療の選択肢が複数あって迷ったときは、それぞれの長所と短所を整理しながら、自分にとって何が大切かという視点で比べることが、納得のいく選択につながります。

主治医以外の専門医の意見を聞く「セカンドオピニオン」も、判断に迷ったときの正当な手段のひとつです。遠慮する必要はありません。
治療費と仕事の現実的な不安

「費用はどれくらいかかるのか」「仕事は続けられるのか」という不安も、治療が近づくにつれて大きくなります。
幸いにも、日本には患者さんの生活を支えるための公的な制度がいくつかあります。
医療費の自己負担が月ごとの上限を超えた分が戻ってくる「高額療養費制度」、病気で会社を休んでいる間の生活を保障する「傷病手当金」、確定申告によって税金が戻る「医療費控除」 ⸺これらを組み合わせることで、経済的な負担は思っていたより軽くなることがあります。
手続きの流れや申請方法については細かいポイントもあります。
当院の医療福祉課では、医療費に関する相談も行っております。どうぞお気軽にご相談ください。
仕事については、退職や休職を急いで決断する前に、少し立ち止まることをお勧めします。
治療の内容によっては、働き方を工夫しながら続けられるケースも少なくありません。
職場への病気の伝え方、勤務時間の調整、利用できる休暇制度など、整理しておきたいことはたくさんあります。
近年は「治療と仕事の両立支援」が社会的にも推進されており、病院の両立支援コーディネーターや社会保険労務士といった専門家に相談できる環境も整ってきています。
職場や主治医とも話し合いながら、まずは使える選択肢を把握することが大切です。
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副作用や体のつらさと向き合う
痛み、吐き気、だるさ、脱毛⸺副作用への不安は少なくないと思います。
こうした症状は、主治医や看護師に正直に伝えることが大切です。
「このくらいで言うのは大げさかな」と遠慮してしまうと、主治医が正確に状態を把握できなくなり、何より患者さん自身にとっても良くありません。がまんは美徳ではないのです。
副作用やがんそのものによるつらさ⸺痛み、息苦しさ、不眠、不安など⸺をやわらげることを目指すのが「緩和ケア」です。かつては「治療法がなくなった後の、終末期の医療」というイメージを持つ方が多くいました。
しかし現在は考え方が大きく変わっており、がんと診断されたときから治療と並行して始めるものとして位置づけられています。
つらさを感じたら遠慮なく医師や看護師に伝えてください。症状がやわらぐことで、日常生活の質を保ちながら治療に向き合えるようになります。
食欲が落ちることも多く、「食べなければ」と自分を追い詰めてしまう方もいます。
でも、食べたいものを、食べられるときに⸺その程度で十分です。
抗がん剤治療中は吐き気や口内炎、味覚の変化などで、普段当たり前に食べていたものが辛く感じられることがあります。
その時の体調に合わせて、自分に合った方法で食事や栄養補給を続けていきましょう。
家族もまた、支えを必要としている
がんは患者さんだけでなく、ご家族にも重くのしかかってきます。
「何と声をかけたらいいか、分からない」
「支え続けられるか不安」
⸺ そう感じているご家族も多いでしょう。
支える側も、一人で抱え込まないことが大切です。
ご家族自身の不安や疲れも、遠慮なく医療スタッフに話してみてください。
治療の道のりは長くなることもあります。でも、医師、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど、さまざまな専門職がそばにいます。
つらいときは「つらい」と、声に出してください。
それが、次の一歩につながります。

※本記事は広報誌「やわらぎ」(198号:2026秋号)に掲載したものをWEB用に再編集したものです。
参考サイト
- 厚生労働省:治療と仕事の両立支援ナビ(https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/)
この記事を書いた人
- 特任副院長
- がん化学療法センター長
- 日本呼吸器学会 指導医
- 日本呼吸器学会 専門医
- 日本内科学会 指導医
- 日本内科学会 認定内科医
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医
- 日本臨床腫瘍学会 指導医
- 日本禁煙学会 禁煙専門医(禁煙認定専門指導者)
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本肺癌学会 暫定指導医
- 日本肺癌学会 中国四国支部評議員
- 日本呼吸器学会禁煙推進委員会SNSアドバイザー












