乳がんについて知っておきたいこと
乳がんは、日本の女性が最も多くかかるがんの一つです。しかし、早期に発見し、適切な治療を受けることで、多くの方が日常生活に戻ることができる病気でもあります。このページでは、乳がんについての基本的な情報をわかりやすくお伝えします。
- 0.1.1. 関連記事
- 1. 乳がんとは
- 1.1. 乳がんの基本情報
- 1.2. 乳がんの種類と進行のしくみ
- 2. 乳がんの症状と診断方法
- 2.1. 乳がんの症状
- 2.2. 診断の流れと検査方法
- 3. 乳がんの治療と術後の生活について
- 3.1. 外科療法(手術)
- 3.1.1.1. 関連記事
- 3.2. 薬物療法と放射線治療
- 3.2.1. 放射線治療
- 4. 乳がんのリスクを知り、早期発見につなげるために
- 4.1. 乳がんのリスク要因を知りましょう
- 4.1.1. 遺伝的なリスク要因
- 4.1.2. 生活習慣や環境によるリスク要因
- 4.2. 生活習慣を見直しましょう
- 4.3. 乳がんは早期発見が重要です
- 4.3.1. 自己チェックの習慣を持ちましょう
- 4.3.2. 関連ページ
- 4.3.3. おすすめ記事
乳がんとは
乳がんの基本情報
がんとは、体の中にある細胞が異常に増え続ける病気です。乳房は、乳腺とそれを包む脂肪組織からなりたっています。
乳腺は母乳を作るための組織で、乳管(母乳の通り道)や小葉と呼ばれる部分でできています。

乳がん(乳癌)は、多くの場合は乳管から発生しますが、一部は小葉や乳腺以外の乳房組織から発生することもあります。乳がんは男性にも発生することがあります。
乳がんの種類と進行のしくみ
乳がんは、乳腺の細胞が何らかのきっかけで変化し、異常に増殖することで発生します。原因は一つではなく、複数の要因が重なって起こると考えられています。
遺伝的な要因としては、BRCA1やBRCA2と呼ばれる遺伝子の変異が知られています。ただし、遺伝が関係する乳がんは全体の一部にすぎず、多くの場合は遺伝だけが原因というわけではありません。
そのほか、生活習慣やホルモンバランスも発症に関わると考えられており、初経・閉経の時期、妊娠や出産の経験、食生活なども影響する可能性があります。
乳がんには、大きく分けて次の2つのタイプがあります。
非浸潤性乳がん

がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっている状態です。周りの組織には広がっていないため、基本的には他に転移する可能性は低いとされています
浸潤性乳がん

がん細胞が基底膜を破って乳管や小葉の外に広がっている状態です。進行すると、リンパ節や他の臓器へ転移する可能性があります。
乳がんは、次のような流れで進行します。
- 乳腺の細胞に小さながん細胞が発生する
- がん細胞が少しずつ増える
- 周りの組織へ広がる(浸潤)
進行すると他の臓器へ転移する可能性もあるため、早い段階で発見することが重要です。
乳がんの症状と診断方法
乳がんの症状
乳がんで最も多い症状は、乳房のしこりです。
しこりは痛みを伴わないことも多く、自分では気づきにくい場合があります。日ごろから乳房全体を軽く触ってチェックする習慣をつけましょう。
しこりの他に、次のような変化にも注意が必要です。
- 乳房が部分的に大きくなった、または形が変わった
- 皮膚が引きつれたり、赤くなったりする
- わきの下にしこりを感じる
- 乳頭から分泌物があり、黒色・褐色・赤色のものが出る
これらの症状は、ホルモンの影響などで起こる場合もあり、必ずしも乳がんとは限りません。しかし、いつもと違う変化に気づいたときは、早めに医療機関で相談することが大切です。

診断の流れと検査方法
乳がんの診断は、いくつかの検査を組み合わせて行われます。
問診・触診
まず、医師による問診や触診が行われます。
症状の有無や変化の時期を確認し、必要に応じて画像検査へ進みます。
マンモグラフィ
乳房専用のX線検査です。乳がん検診の基本とされており、目に見えない小さな変化を確認することができます。
40歳以上の方には定期的な検診受診が勧められています。
エコー(超音波)検査
マンモグラフィで異常が見つかった場合や、しこりの性質を詳しく調べるために用いられます。
痛みが少なく、年齢に関係なく受けられる検査です。
生検
これらの検査でがんが疑われた場合、組織の一部を採取して詳しく調べます。
この検査によって、がんかどうかが確定します。
診療の流れは患者さんによって異なりますが、検査を段階的に行い、必要な情報を確認しながら進められます。
乳がんの治療と術後の生活について
乳がんの治療には、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。
がんの広がり方や患者さんの体の状態に応じて、医師と相談しながら治療法を選択していきます。
外科療法(手術)
外科療法(手術)は、乳がんの治療で行われることの多い治療方法の一つです。主な目的は、乳房内にあるがんを取り除き、病気の進行を抑えることです。
代表的な手術には、次のような方法があります。
乳房全摘出術
乳房全体を切除する手術です。がんの範囲が広い場合や、再発のリスクを考える必要がある場合に行われます。

乳房温存術
腫瘍とその周りのみを切除し、乳房をできるだけ残す方法です。腫瘍のサイズが小さな乳がんで選択されることが多く、手術後に放射線治療を組み合わせることで、乳房全摘出術と同程度の治療効果が期待できる場合があります。

どの手術が適しているかは、乳がんの進行の程度や、がんが皮膚や周りの臓器へ影響しているかどうかによって異なります。また、閉経前後で治療の考え方が変わる場合もあり、医師と十分に相談しながら決定されます。
手術後は、傷のケアだけでなく、肩や腕の動きを保つためのリハビリが行われることがあります。医療スタッフのサポートを受けながら、少しずつ日常生活へ戻っていきます。
また、乳がんの治療では、乳房の切除を行う場合に、乳房再建手術を行うこともあります。
乳房再建は、見た目や生活の質を考慮した治療の一つで、再建を行うかどうかは、がんの状態や治療の進め方だけでなく、患者さんご本人の希望を大切にしながら、医師と十分に相談した上で決定されます。
再建の方法や時期についても複数の選択肢があり、体の状態や生活状況に応じて検討されます。
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薬物療法と放射線治療
乳がんの治療では、手術だけでなく、薬物療法や放射線治療を組み合わせることが多くあります。これらは、目に見えないがん細胞への対策や、再発のリスクを下げることを目的としています。
薬物療法
抗がん剤やホルモン療法などがあります。抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える働きがあり、リンパ節への転移が確認された場合や、再発の可能性が高いと判断された場合に使用されることがあります。ホルモン療法は、ホルモンの影響を受けやすいタイプの乳がんに対して行われます。
薬物療法は全身に作用するため、副作用が出ることもあります。症状の程度は患者さんによって異なり、必要に応じて治療内容の調整が行われます。
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放射線治療
高いエネルギーの放射線を使ってがん細胞に働きかける治療法です。乳房温存術後に行われることが多く、転移の予防や再発を抑えることを目的とします。治療は通院で行われることが一般的で、一定の期間継続して実施されます。
いずれの治療法も、患者さんの状態や生活への影響を考えながら、医師と相談して進められます。
乳がん手術後の生活と注意点
手術直後の体の変化
乳房の切除や部分切除を行った場合、術後しばらくは痛みや腫れが出ることがあります。これらの症状は多くの方に見られるもので、時間の経過とともに落ち着いていくことがほとんどですが、無理をせず、気になる症状があれば早めに医師へ相談することが大切です。痛み止めの使用や日常生活での注意点については、診察の際に説明を受けながら調整していきます。
無理のない範囲で体を動かしましょう
手術後の回復を助けるために、リハビリや軽い運動を取り入れることが勧められる場合があります。特に乳房やわきの下を手術した後は、肩や腕の動きが制限されることがあるため、無理のない範囲で体を動かすことが大切です。リハビリは「頑張りすぎない」ことがポイントで、直後は控えめに始め、体の様子を見ながら少しずつ進めていきます。
乳房再建を行った場合には
乳房再建を行った場合、再建直後は、重い物を持つ動作や腕を大きく動かす動きは控え、医師から説明された範囲で生活するようにしましょう。再建の方法によっては、傷の状態や回復のスピードに個人差があるため、経過を確認しながら少しずつ活動量を調整していきます。
乳がん手術術後は、体だけでなく、気持ちの面でも変化を感じやすい時期です。気になる点があれば、受診の際に遠慮せず相談し、自分に合った生活のペースを整えていきましょう。がん相談支援センターでは、がん患者さんやご家族からのがんに関する不安、悩みについてのご相談をお受けしています。
関連ページ
乳がんのリスクを知り、早期発見につなげるために
乳がんのリスク要因を知りましょう
乳がんの発生には、さまざまなリスク要因が関係すると考えられています。すべての人に同じ原因が当てはまるわけではなく、複数の要因が重なって起こる場合が多いとされています。
遺伝的なリスク要因
BRCA1やBRCA2という遺伝子に変化がある場合、乳がんや卵巣がんのリスクが高まる可能性があります。ただし、遺伝性の乳がんは全体の一部であり、家族に乳がんの方がいるからといって、必ず発症するわけではありません。遺伝的なリスクの有無を知ることは、今後の検診や治療の方針を考える上で役立つ場合があります。
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生活習慣や環境によるリスク要因
乳がんの発症には、遺伝的要因だけでなく、生活習慣や環境要因も関係すると考えられています。飲酒、肥満、運動不足などは乳がんの発症リスクと関連することが知られており、日頃からバランスのよい食事や適度な運動を心がけることが大切です。
乳がんのリスクを完全になくすことは難しいですが、定期的な検診を受けることや、日ごろからのチェックで自分の体の変化に気づくことが大切です。
生活習慣を見直しましょう
日々の生活習慣も、乳がんと関係している可能性があると考えられています。特に女性に多いがんであることから、ホルモンの分泌や体の状態との関連が注目されています。
食生活を見直しましょう
食生活は体全体の健康に影響を与えるだけでなく、体の調子を整える役割があると考えられています。一方で、脂肪分の多い食事や偏った栄養が続くと、体重増加やホルモンバランスの変化につながることがあります。
特に閉経後の女性では、体脂肪がホルモン分泌に影響するため、食事の内容に気を配ることが大切だとされています。
バランスの取れた食生活を心がけましょう。

運動習慣を身につけましょう
定期的な運動も重要です。運動を行うことで、体重管理がしやすくなり、ホルモンの分泌や代謝に良い影響を与える可能性があります。特別な運動でなくても、ウォーキングなどを一定の時間続けることが、日常生活の中で取り入れやすい方法です。

アルコール摂取を控えましょう
アルコールの摂取量が多いほど、乳がんのリスクが高くなる可能性があることが報告されています。アルコールはホルモンの分泌に影響を与えることがあり、長期的な飲酒習慣が体に負担をかける場合があります。量や頻度を意識することが大切です。

乳がんは早期発見が重要です
乳がん検診を受けましょう
乳がんは、症状が出にくい場合もあり、気づかないうちに進行していることがあります。検診によって早期発見ができれば、乳房を温存できる治療法を選択できる可能性が高まるとされています。早い時期に見つかることで、体への負担が比較的少ない治療を受けることができる場合もあります。
自己チェックの習慣を持ちましょう
検診受診だけでなく、自らが自身の体の変化に気づくことも重要です。日ごろから乳房に触れ、左右の違いや違和感がないかを意識することで、早い段階で変化に気づくことがあります。自己チェックは特別な方法で行う必要はなく、入浴中や着替えの際に自然に行うことができます。
「いつもと違う」と感じた場合は、検診の時期を待たずに医療機関を受診することが勧められます。気になる症状があっても、早めに相談することで安心につながります。
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医師とのコミュニケーションを大切にしましょう
検診や受診の際には、不安や疑問をそのままにせず、医師に伝えることが大切です。検査の内容や結果について理解することで、自分の体の状態を正しく知ることができます。
乳がんの検診は、病気を見つけるためだけでなく、健康について考えるきっかけにもなります。定期的に検診を受けることは、自分自身の体を大切にする行動の一つです。
安心して生活を続けるために、検診を受ける習慣を取り入れていきましょう。
この記事を書いた人
- 副院長
- 医療安全推進部長
がん診療連携拠点病院統括責任者
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本外科学会 外科専門医
- 日本乳癌学会 乳腺専門医
- 日本乳癌学会 乳腺指導医
- 日本乳癌学会 乳腺認定医
- 検診マンモグラフィ読影医B評価
- 岡山大学医学部医学科臨床教授
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