変形性膝関節症の予防と、運動・靴・杖の工夫
「3,000万人」――この数字をご存じでしょうか。
これは、日本における変形性膝関節症の推定患者数とされる数字です(※1)。
変形性膝関節症は、年齢を重ねるとともに増えていく、とても身近な病気です。
膝の痛みを「年のせいだから」とあきらめていませんか。
変形してしまった軟骨を元に戻すことはできませんが、進行を遅らせることは可能です。
今回は、理学療法士として日々患者さんと向き合う中で大切だと感じている、「ずっと自分の足で歩くためにできること」をお伝えします。
※1:厚生労働省 介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について報告書」
変形性膝関節症とは?
膝は、太ももの骨(大腿骨)、すねの骨(脛骨)、お皿の骨(膝蓋骨)の3つから成り立っています。骨の表面は「関節軟骨」に覆われていて、半月板や靱帯、筋肉がクッションや支えの役割を果たしています。
変形性膝関節症は、この軟骨がすり減ることに加えて、膝全体に痛みや変形が生じてくる状態のことです。変形が進むと炎症が起こり、膝が腫れたり、曲げ伸ばしがしづらくなったり、歩くときに痛みが出たりします。
変形性膝関節症についての詳細は、下記の記事をご覧ください。
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変形性膝関節症とは?痛みなどの症状や治療、予防法と対策も網羅
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、歩行などの動作開始時に痛みを感じるようになる疾患です。放置すると介護が必要になる場合があり、早期に治療を開始することが大切です。このページでは痛みなどの症状や治療法などについて解説します。
どうして膝が変形するの?
変形性膝関節症になる主な原因は、次の4つです。
加齢と体重増加
長年の負担の積み重ねや、体重が増えることで膝へのストレスが大きくなります。
膝のケガの既往
過去に半月板や靱帯を痛めて、そのまま放置していると、将来の変形につながることがあります。
筋力低下
特に太ももやお尻の筋肉が弱くなると、関節へ直接負担がかかりやすくなります。
O脚・外反母趾などの骨格
外反母趾になると足の親指で踏ん張れなくなり、重心が外側へ移動します。その結果としてO脚が進行し、膝への負担が増えます。
変形性膝関節症が進行すると、どうなるの?
変形性膝関節症は、進行するにつれて以下のような症状が見られるようになり、日常生活に大きな支障をきたす場合があります。
1.初期
- 立ち上がりや歩き始めの痛み
- 階段がつらい
- 膝が重だるい
2.進行期
- 歩くとずっと痛い
- 正座やしゃがみ込みができない
- 膝に水がたまる
3.さらに進むと…
- 少し歩くだけで痛い
- 寝ていても痛い
- (ひどい場合は)歩行困難に
すり減ってしまった軟骨を元に戻すことはできません。
だからこそ、痛くなって歩けなくなる前に、進行を遅らせることが大切です。
今日からできる3つの対策
【対策1】体重をコントロールしましょう
膝には、
- 歩行時:体重の約3倍
- 階段:体重の約5倍
の負担がかかると言われています。
体重が1kg減るだけでも、膝の負担は3~5kg軽くなります。そのため、体重管理はとても重要です。
とはいえ、急に大きなことを始める必要はありません。まずは活動量を少し増やすことから始めてみましょう。
特別な運動でなくても構いません。日常生活の中で、歩く時間をほんの少し増やしてみましょう。
厚生労働省の指標によると、適切な1日あたりの歩数は
- 65歳以上:6,000歩
- 65歳未満:8,000歩
とされています。
いきなり目標を目指すのではなく、今より+500~1,000歩を意識する程度で十分です。
ただし、痛みが強い場合は無理をしないことが大切です。
翌日に痛みが増えていないかを確認しながら、少しずつ取り組みましょう。
【対策2】膝を守る筋力トレーニングを取り入れましょう
太ももの前を鍛える運動

やり方:
- 椅子に座る
- 片足をゆっくり水平まで伸ばす
- 5秒止める
- ゆっくり戻す
回数の目安:左右10回ずつ、1日2セット
ポイント:
※息を止めないように
※背筋を伸ばして
※痛みが出たら中止してください
O脚気味の方は、膝の間にタオルを挟みながらやると効果的です。
お尻の横を鍛える運動

目的:お尻の横を鍛え、歩く姿勢を安定させます。
やり方:
- 椅子の背を持って立つ
- 片足を横に開く
回数の目安:左右10回ずつ、1日2セット
ポイント:
※つま先は前向きのまま
※背筋を伸ばして
※痛みが出たら中止してください
【対策3】靴の見直しをしましょう
自分の足に合ったサイズ・形の安定した靴を選ぶ
1.サイズの選び方:
意外と見落としがちなのが、靴のサイズです。
以下を参考に、ご自身の足にあったサイズの靴を選びましょう。

足長:
最適な足長サイズは
足長+1.0~1.5cm(指1本分の余裕)
です。
足囲(ワイズ):
足囲(ワイズ)は親指と小指の付け根の骨の出っ張りを一周した長さです。
足長と足囲をもとに、ご自身にあったサイズ(E, 2E, 3E, 4Eなど)がわかります。
※さまざまなシューズメーカーのWEBサイトで、JIS規格のサイズ表が男女別で掲載されていますので、購入時の目安にしてみてください。
2.かかとの形状:
押してもつぶれない、固く安定したかかとを選ぶ(ぐらつく靴は膝に余計な負担がかかります)。
3.靴底の形状:
足の付け根で曲がり、中央で折れない靴底がよいとされます(土踏まずで曲がる柔らかい靴は不安定になりやすく、注意が必要です)。
つま先の形にあわせた靴を選ぶ
エジプト型

親指>人差し指
特徴
- 日本人の約70%と言われています。
- つま先の細い靴は親指が圧迫されて外反母趾になりやすいため、はかないようにしましょう。
エジプト型に合う靴の形:オブリーク
親指の先の長さに余裕があるタイプの靴を選びましょう。
ギリシャ型

親指<人差し指
特徴
- 日本人の約25%と言われています。
- 人差し指が曲がったまま硬直してしまうハンマートゥになりやすいため、全体的に余裕のある靴を選びましょう。
ギリシャ型に合う靴の形:ラウンド
第二指の先の長さに余裕があるタイプの靴を選びましょう。
スクエア型

親指=人差し指
特徴
- 日本人の約5%と言われています。
- 体重がすべての指に均等にかかるため他の足型と比べて指への負担は少ないですが、指の間に魚の目ができやすいとされています。
スクエア型に合う靴の形:スクエア
すべての指が伸ばせ、横幅に余裕があるタイプの靴を選びましょう。
靴底のすり減りをチェックする
靴底のすり減りにも注意が必要です。
特にソールの外側だけがすり減った状態で歩き続けると、足を地面に着いたときに身体が外側へ傾きやすくなります。その傾きが繰り返されることで、膝の内側や外側に余計なストレスがかかり、痛みや変形の進行につながる可能性があります。
見た目にはまだ履けそうでも、左右で減り方が違う、外側だけ極端に減っているといった場合は注意が必要です。
靴は消耗品です。定期的に靴底の状態を確認し、必要に応じて交換することも、膝を守る大切なポイントです。
それでも痛むときは、杖も選択肢です
杖を使うと、膝の内側の荷重が10~25%軽減すると報告されています。
「まだ杖は早い」と思われる方も多いですが、
- 楽に歩ける
- 歩く量が増える
- 筋力低下を防げる
- 反対側の足を守れる
といった大きなメリットがあります。
杖を選ぶ際の基本

高さ:
立ったときの手首の高さ

持ち手:
痛い足と反対の手で、支柱を人差し指と中指で挟む

歩き方:
痛い足と杖を一緒に出す
杖は正しく使うことで、膝をしっかり守ることができます。
ずっと歩き続けるために、今こそ始めましょう
変形性膝関節症は、誰にでも起こり得る病気です。
しかし、
- 体重管理
- 筋力トレーニング
- 靴の見直し
- 必要に応じた杖の活用
これらを積み重ねることで、進行を遅らせることができます。
「まだ歩けるから大丈夫」ではなく、「歩ける今こそ始めどき」です。いつまでも自分の足で歩き続けるために、今日からできることを一つ、始めてみませんか。
膝の痛みが気になる方は、無理をせず、早めにお近くの整形外科へご相談ください。





