内科と外科が支える “切れ目のない消化器診療”

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胃や腸などの消化器の不調があるとき、「内科に行けばいいの? それとも外科?」と迷う方は少なくありません。当院では、消化器内科と消化器外科が“ひとつのチーム”として協力し、患者さん一人ひとりに適した治療を行っています。今回は、そんな消化器医療を支える二人の医師に、連携の工夫や思いをお聞きしました。

それぞれの専門から、チームで支える消化器診療

河合 大介(かわい だいすけ)
消化器内科 診療部長

専門は消化器内視鏡診療。趣味はマラソンとゴルフ。毎年岡山マラソンのドクターランナーとして出場し市民の安全を守ること、自身の健康維持、自己ベストの更新のために精進しています。

――まずは自己紹介をお願いします。

河合 私は消化器内科の中でも主に消化管、つまり胃や大腸の領域を中心に診療しています。
他院から内視鏡検査や治療のために紹介いただく患者さんも多く、診断や病状の評価を行っています。

また、手術が必要になる症例では、診断から全身評価までをできる限り整えて、外科の先生におつなぎしています。
なるべく外科の先生の手を煩わせないようにと考えています。

桒田 外科では、消化器のすべてのがんを対象に治療を行っています。特に当院では、上部・下部消化器、肝胆膵、呼吸器、婦人科、泌尿器の6領域でロボット手術が可能な環境が整っており、多様な手術に対応しています。

僕は胃がんと食道がんの手術を担当していますが、外科医であっても内視鏡のことを理解しておくことが大切だと考えています。
自分の患者さんについては、できるだけ内視鏡室に行って内科の先生と一緒に検査を確認しています。

外科医も内視鏡を握って現場で内科の先生と話し合う、そういう垣根の低い関係が大事だと思っています。

“どちらからでも”で始まる診療の流れ

――内科と外科、それぞれの役割分担はどうなっていますか?

河合 内科と外科にはそれぞれ得意分野がありますが、当院では診療の流れの中で自然に連携できる体制になっています。

内科では診断や病気の進行度の評価、内視鏡による治療を中心に行っています。一方で、病変が進行し内視鏡治療で十分な根治が得られず手術が必要と判断した場合は外科の先生にお願いしています。

私の方で診断した患者さんでも、外科での手術が最善と判断すればすぐに紹介しますし、逆に外科から「手術は侵襲が大きいため内視鏡による治療ができないか」と相談を受けることもあります。

お互いの得意分野を尊重しながら、スムーズにバトンを渡し合える関係になっているのが特徴です。

桒田 僕も同じ考えです。内科にかかった方がいいのか、外科にかかった方がいいのか――正直、どちらでもいいと思っています。
コミュニケーションが取りやすい関係になっていれば、院内で紹介をお願いするのもすぐ言えるし、困る話ではありません。実際、内科から手術をお願いされたり、外科から内視鏡治療をお願いしたりというやり取りは日常的にあります。

桒田 和也(くわだ かずや)
消化器外科 主任医長

小学生から大学生までずっと野球をしていました。ポジションはずっと捕手でした。福山出身なので広島カープのファンです。今はロボット手術を頑張っています。

河合 同時期にお互いの入院患者さんが入れ替わったこともありましたね。内科に入院された患者さんですが、手術した方がいいと判断して桒田先生に紹介して。

桒田 僕の方は他院から消化器外科に紹介された患者さんを、内視鏡の方がいいと判断して河合先生にお願いして。
「内科だから」「外科だから」と分けるのではなく、ひとつのチームとして診ていく。それがうちの特徴であり、強みだと思います。

日常的なやり取りがつくる信頼関係

――連携がうまくいった印象的なケースはありますか?

桒田 連携は日常的に行われています。検診で異常が見つかった患者さんの場合、最初は内科で検査をしてもらい、「手術が必要」となれば僕ら外科が引き継ぎます。

逆に、僕の方で診た患者さんでも「これは内視鏡の方が良い」と判断したら河合先生にお願いしています。先生とは外来診察の曜日が同じなので、連携はとてもスムーズです。普通なら一度退院して再入院という流れが多いですが、遠方の方だったり、タイミングが良ければそのまま入院を継続して転科することもあります。患者さんの負担が少なく済むようにできるのは、信頼関係があるからです。

河合 後日改めて紹介するより、当日診てもらえるのは患者さんにとって手間が少なくなるのはもちろん、私たちにとってもありがたいです。内科と外科が一つのチームとして診ていることを実感します。

スムーズな連携を生む、日々の活動

――普段からどのように連携を深めているのでしょうか。

河合 定期的にカンファレンスを行い、内科・外科の先生たちで症例を出し、治療方針を共有しています。タイミングが合わないときは個別に相談して進めることもあり、形式にこだわらず柔軟に対応しています。

カンファレンスでの意見交換は内科と外科が同じ方向を向くことにつながっています。

桒田 実際の現場でもよく話し合っています。一緒に仕事をしながらディスカッションできる関係が理想です。日常的に顔を合わせていると「この症例は内科で」「この範囲なら外科で」という感覚が共有できます。若い先生にもその雰囲気を感じてもらい、シームレスな診療を文化として根づかせたいですね。

内科・外科合同カンファレンスの様子(画像の一部を加工しています)

これからの展望

――今後の展望を教えてください。

河合 薬物療法が進歩して、昔は手術が難しかった症例でも、薬で腫瘍を縮小させて手術できることが増えています。そうしたコンバージョン手術では、どのタイミングで外科にバトンを渡すかが大切です。

外科の先生から相談しやすいと言ってもらえるよう、術前から術後まで一貫して情報を共有できる体制をさらに強化したいと考えています。

桒田 外科としても、手術の守備範囲を広げていくためにも、化学療法や化学療法カンファレンスにも関わっていく必要があります。手術のタイミングや化学療法の薬は何を使うかなどの話をできる機会を増やしていくことが大事かなと思います。

外科・内科が分け隔てなく、一緒に治療方針を考える時間を増やすことが、患者さんにとって一番良い医療だと思っています。

患者さんへのメッセージ

――最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。

河合 どちらの診療科でも安心して受診してください。当院では内科と外科が常に情報を共有しており、どちらに来ていただいても適切な治療法を一緒に考えます。

最近ではL E C S(レックス)という手術もしています。外科の先生の腹腔鏡手術と内科医の内視鏡手術を同時に行うことで、体への負担を最小限に抑え、切除ができるようになっています。患者さんそれぞれに合った治療を考え、より良い選択を提供したいと思っています。

桒田 当院の強みは、内科と外科が近い距離で連携していることです。病気を診るだけでなく、どうすれば患者さんの負担を減らせるかを常に考えています。

内科か外科かを意識せず、安心して“岡山済生会の消化器チーム”に来てください。

※LECS…Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgeryの略。胃の腫瘍などに対して、外科医による腹腔鏡手術と内科医による内視鏡治療を同時に行い、必要最小限の範囲で切除する手術

編集後記

内科と外科の垣根を越えて一人の患者さんを支える――。
お二人の言葉からは、チーム医療の温かさと確かさが感じられました。

日々の信頼関係の積み重ねが、当院の“丁寧で切れ目のない診療”を支えています。


※本記事は広報誌「やわらぎ」(195号:2025冬号)に掲載したものをWEB用に再編集したものです。

この記事を書いた人

河合 大介かわい だいすけ

所属
役職
  • 診療部長
資格
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本内科学会 指導医
  • 日本内科学会 認定内科医
  • 岡山大学医学部医学科臨床講師
かわい だいすけ

この記事を書いた人

桒田 和也くわだ かずや

所属
役職
  • 主任医長
資格
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本食道学会 食道科認定医
  • 日本外科学会 外科専門医
  • 日本外科学会 外科指導医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科指導医
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医(消化器・一般外科 腹腔鏡(補助)下幽門側胃切除)
  • 日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術プロクター(消化器・一般外科)
  • 日本ロボット外科学会Robo-DocPilot
  • 産業医科大学産業医ディプロマ
  • 日本内視鏡外科学会 評議員
  • 岡山大学医学部医学科臨床准教授
  • Certificate of da Vinci Technology Training as a Console Surgeon
くわだ かずや

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