CKD(慢性腎臓病)を知ろう~慢性腎臓病の進行を防ぐために大切なこと
CKD(Chronic Kidney Disease:慢性腎臓病)は、日本では成人のおよそ5人に1人が該当するといわれる疾患です。患者さんが多い一方で、早い段階では自覚症状がほとんどないことが特徴です。そのため、健康診断や検査で偶然見つかることも少なくありません。
腎臓の働きが低下すると、体のさまざまな機能に影響が出る可能性があります。早期に異常に気づき、適切な診療につなげることが大切です。ここでは、腎臓の働きや検査、慢性腎臓病の特徴、治療のポイントについて、順を追って説明します。
腎臓の働きとは
腎臓は腰の少し上、背骨をはさんで左右に一つずつある臓器です。形はそら豆のようで、大きさはこぶしほどですが、体の中では非常に重要な役割を担っています。
腎臓のいちばん大切な働きは、血液をろ過して老廃物を尿として体の外へ出すことです。この働きをしているのが「糸球体」と呼ばれる小さな血管の集まりです。血液は糸球体を通るときにろ過され、不要なものが尿として排出されます。
腎臓には、尿をつくる以外にも次のような働きがあります。
- 体の水分量を調節する
- ナトリウムやカリウムなどのミネラルのバランスを整える
- 血圧を調節する
- 赤血球をつくる働きに関わる
- 骨の健康に関係するカルシウムの調節に関わる
このように腎臓は、血液や血管、心臓などと関連しながら、体の環境を一定に保つ働きをしています。

腎臓の働きを調べる検査
腎臓の状態を調べるうえで基本になるのは、血液検査と尿検査です。
血液検査でわかること
血液検査では、クレアチニンという老廃物の濃度を測定します。クレアチニンは体の中で自然に作られる物質ですが、腎臓の働きが低下すると血液中にたまりやすくなります。
この値から計算されるのが、糸球体濾過量(eGFR)です。これは、腎臓がどのくらい血液をろ過できているかを示す重要な指標です。
一般的には、
- eGFRが60以上:腎機能が保たれている目安
- eGFRが60未満:腎機能が低下している可能性
と考えられます。値が低いほど、腎臓の働きが弱くなっていると評価されます。

尿検査でわかること
尿検査では、蛋白尿やアルブミン尿があるかどうかを確認します。
蛋白尿やアルブミン尿は、腎臓の障害を示す重要なサインです。これらが持続している場合には、腎臓に負担がかかっている可能性があり、注意が必要です。
腎生検でわかること
さらに原因を詳しく調べる必要がある場合には、腎生検が行われることもあります。これは腎臓の組織を採取して、顕微鏡で疾患の種類や重症度を調べる検査です。
CKD(慢性腎臓病)と腎臓の病気
腎臓の病気にはさまざまな種類がありますが、その多くは腎臓の働きが徐々に低下していくという共通点があります。CKD(慢性腎臓病)は、そのような腎臓の病気をまとめた考え方です。ここでは、CKDの意味と、代表的な腎臓の病気である慢性糸球体腎炎、そして腎臓の機能低下が進んだ状態である慢性腎不全や末期腎不全について説明します。
CKD(慢性腎臓病)とは
CKD(慢性腎臓病)とは、腎臓の働きが慢性的に低下している状態を指します。
具体的には、次のいずれか、または両方が3か月以上続く場合に診断されます。
- 蛋白尿など、尿検査で異常がある
- 糸球体濾過量が60未満である
CKDは一つの病名ではなく、さまざまな腎臓の病気をまとめた考え方です。
原因となる主な疾患には、次のようなものがあります。
- 糖尿病
- 高血圧
- 慢性糸球体腎炎
また、腎臓病の発症や進行には、次のような生活習慣病も関係するとされています。
- 肥満
- 脂質異常症
さらに、年齢が高くなるほど発症する人が増えることも知られています。
慢性腎臓病(CKD)の重症度は、eGFRの値と蛋白尿の程度によって分類されます(eGFRの値では6段階に分類します)。
CKDの重症度分類表
| 原疾患 | 蛋白尿区分 | A1 | A2 | A3 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 糖尿病関連腎臓病 |
尿アルブミン定量(mg/日) 尿アルブミン/Cr比(mg/gCr) |
正常 | 微量アルブミン尿 | 顕性アルブミン尿 | ||
| 30未満 | 30~299 | 300以上 | ||||
|
高血圧 腎炎 多発性嚢胞腎 腎移植 不明 その他 |
尿蛋白定量(g/日) 尿蛋白/Cr比(g/gCr) |
正常 | 軽度蛋白尿 | 高度蛋白尿 | ||
| 0.15未満 | 0.15~0.49 | 0.50以上 | ||||
|
GFR区分 (mL/分/1.73㎡) |
G1 | 正常または高値 | ≧90 | |||
| G2 | 正常または軽度低下 | 60~89 | ||||
| G3a | 軽度~中等度低下 | 45~59 | ||||
| G3b | 中等度~高度低下 | 30~44 | ||||
| G4 | 高度低下 | 15~29 | ||||
| G5 | 末期腎不全(ESKD) | <15 | ||||
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- 出展:一般社団法人 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2024』(https://jsn.or.jp/medic/guideline/)
慢性糸球体腎炎とは
慢性糸球体腎炎とは、腎臓の糸球体に炎症が起こり、その状態が長く続く病気です。糸球体に炎症が起こると、血液をろ過する働きが低下し、蛋白尿や血尿がみられることがあります。
この病気で大切なのは、初期には自覚症状が出にくいことです。体に大きな変化を感じなくても、健康診断の尿検査で蛋白尿が見つかり、初めて気づくことがあります。
慢性糸球体腎炎の状態が続くと、腎臓の働きが徐々に低下し、慢性腎臓病として経過することがあります。そのため、尿検査で異常を指摘された場合には、そのままにせず受診することが大切です。
慢性腎不全とは
慢性腎不全とは、腎臓の働きが長い時間をかけて徐々に低下していく状態です。慢性腎臓病が進行した状態ともいえます。
腎機能が低下すると、次のようなことが起こります。
- 体の中の老廃物を十分に出せなくなる
- 水分がたまりやすくなる
- ミネラルのバランスが乱れやすくなる
その結果として、
- むくみ
- 倦怠感
- 貧血
などの症状が現れることがあります。
慢性腎不全まで進んでいても、適切な管理によって進行を遅らせることは大切です。
末期腎不全とは
慢性腎不全がさらに進行し、腎臓だけでは体の状態を維持することが難しくなった状態を、末期腎不全といいます。
この段階になると、腎臓の働きを補うための治療(腎代替療法)が必要になります。
代表的な治療は、透析療法と腎臓移植です。

透析療法
透析療法は、腎臓のかわりに血液をろ過し、老廃物や余分な水分を取り除く治療です。透析には主に次の二つがあります。
血液透析
医療機関で定期的に行うことが多い治療です。
血液透析は、血液を体の外に取り出して機械でろ過し、老廃物や余分な水分を取り除く治療です。腎臓の働きの一部を人工的に補う方法として広く行われています。
血液透析の特徴は次の通りです。
- 血液を体の外に取り出して透析装置でろ過する
- 医療機関で行うことが多い
- 一般的には週に3回、定期的に通院して治療を受ける
- 治療の前に「シャント」と呼ばれる血管の通り道を作る手術を行うことがある
- 老廃物や余分な水分を取り除くことで体の状態を保つ
腹膜透析
腹膜透析は、お腹の中にある腹膜という膜を利用して血液をきれいにする透析療法です。腹膜には多くの血管があり、透析液との間で老廃物や水分を交換することができます。
腹膜透析の特徴は次の通りです。
- お腹に入れたカテーテルから透析液を入れて行う
- 腹膜を利用して血液中の老廃物や水分を取り除く
- 自宅で行うことができる透析方法
- 患者さん自身や家族が手順を覚えて管理する
- 通院回数が比較的少なく生活スタイルに合わせて行える場合がある
腎臓移植
腎臓移植は、健康な腎臓を移植する治療です。
※すべてのCKDの患者さんが末期腎不全になるわけではありませんが、こうした治療が必要になる可能性があるため、できるだけ早い段階から進行を抑えることが重要になります。
腎臓病の症状と合併症
慢性腎臓病は、早い段階では自覚症状が少ない病気です。そのため、異常があっても気づきにくいという特徴があります。
腎機能が低下すると、次のような症状が現れることがあります。
- むくみ
- 倦怠感
- 貧血
- 食欲低下
また、体内のミネラルバランスが乱れることで、カリウムの上昇などが起こることもあります。
さらに、慢性腎臓病では腎臓だけでなく全身への影響にも注意が必要です。特に、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症リスクが高くなることが知られています。腎臓の機能低下は血管の状態にも影響を与え、動脈硬化を進める危険因子の一つと考えられています。
慢性腎臓病の治療のポイント
慢性腎臓病の治療で最も大切なのは、腎臓の働きの低下をできるだけ抑えることです。
腎臓の機能は一度大きく低下すると元に戻すことが難しいため、病気の進行を遅らせることが治療の中心となります。特に慢性腎臓病がステージG3b期以降に進むと、腎機能を回復させたり進行を完全に止めたりすることは難しいとされています。

そのため、できるだけ進行を遅らせ、透析療法が必要になる時期を遅らせることが治療の大きな目標となります。また、腎臓病の進行を抑えることは、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症リスクを下げることにもつながります。
適切な治療と、以下のような生活管理を続けることで、病気の進行を遅らせることが期待されます。
血圧を適切にコントロールしましょう
高血圧は、腎臓の機能低下を進める大きな因子です。血圧が高い状態が続くと、糸球体に負担がかかり、腎機能が悪化する可能性があります。
そのため、慢性腎臓病の治療では血圧管理が非常に重要です。必要に応じて塩分制限や降圧薬を使用し、血圧を適切にコントロールしていきます。

食事を見直しましょう
食事療法では、まず塩分の摂取を控えることが基本になります。塩分を多く摂ると血圧が上がりやすくなり、腎臓への負担が大きくなるためです。
また、蛋白質の摂取量にも注意が必要です。蛋白質は大切な栄養素ですが、過剰に摂取すると老廃物が増え、腎臓に負担がかかることがあります。極端な制限はよくありませんが、適切な量を意識することが大切です。
食事療法で意識したい点をまとめると、次の通りです。
- 塩分の摂取を控える
- 蛋白質をとり過ぎない
- 栄養不足にならないように気をつける

生活習慣を改善しましょう
生活習慣の見直しも、腎臓病の進行を抑えるうえで大切です。肥満や脂質異常症などの生活習慣病は、腎臓病の発症や悪化に関係するとされています。
そのため、次のような点が大切になります。
- 体重管理
- 適度な運動
- 禁煙
- 十分な睡眠
こうした生活習慣の改善は、腎臓だけでなく全身の健康にもつながります。

薬は正しく服用しましょう
慢性腎臓病では、腎臓を保護する作用のある薬剤が使用されることがあります。降圧薬などの薬剤は血圧を下げるだけでなく、腎臓の負担を減らす効果も期待されます。
また、糖尿病などの基礎疾患がある場合には、その治療をきちんと続けることも重要です。薬は自己判断で中止せず、医師の指示に従って使用することが大切です。

腎不全を悪化させる病気の治療をしましょう
慢性腎臓病では、腎臓の病気そのものだけでなく、腎機能の低下を進める可能性のある病気を適切に治療することも重要です。特に次のような病気は、腎臓の働きに影響を与えることが知られています。
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- 肥満
これらの病気は生活習慣病とも呼ばれ、腎臓の血管に負担をかけることで腎機能の低下を進める可能性があります。そのため、血糖値や血圧、コレステロールの値を適切にコントロールし、体重管理を行うことが大切です。
腎臓病の治療では、腎臓だけを治療するのではなく、こうした関連する疾患も含めて全身の状態を管理していくことが重要になります。

定期的に検査を受けましょう
慢性腎臓病は自覚症状が出にくいため、定期的な検査がとても重要です。血液検査や尿検査によって、腎臓の状態や蛋白尿の程度を確認しながら、病気の進行を評価していきます。
症状がないから大丈夫と考えず、継続して検査を受けることが大切です。

おわりに――生活の中でできることから取り入れましょう
腎臓の健康を守るためには、日常生活の積み重ねも重要です。特別なことをするというより、毎日の生活を整えることが腎臓への負担を減らすことにつながります。
意識したいこととしては、次のような点があります。
- 適度に体を動かす
- 十分な睡眠をとる
- 感染症予防を心がける
- 水分のとり方に気をつける
健康診断で腎機能の異常や蛋白尿を指摘された場合には、早めに医療機関を受診し、医師に相談することが大切です。早期に発見し、適切な診療を受けることで、病気の進行を抑えることにつながります。
慢性腎臓病は早期発見と適切な管理が重要です。大切な腎臓を守るためにも、健康診断を活用し、ご自身の腎臓の状態を知ることから始めてみましょう。
気になることがあればお気軽にご相談ください。
参考サイト
- 一般社団法人 日本腎臓学会(https://jsn.or.jp/)
この記事を書いた人
- 特任副院長
- 腎臓病・糖尿病総合医療センター長
透析予防診療チームリーダー
- 日本腎臓学会 専門医
- 日本透析医学会 専門医
- 日本内科学会 指導医
- 日本内科学会 認定内科医
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本腹膜透析医学会 認定医
- 岡山大学医学部医学科臨床教授







