ただの風邪? その咳、実は肺炎かも

「熱が下がらない」「咳が長引いている」……。冬場や季節の変わり目に体調を崩すと、つい「風邪だろう」と思ってしまいがちです。でも、その症状、実は日本人の死因上位を占める「肺炎」のサインかもしれません。
今回は、肺炎の典型的な症状から風邪との見分け方、そして特に気をつけたい高齢者の「隠れ肺炎」のサインまでお伝えします。
ご自身やご家族の命を守るために、ぜひ最後まで読んでみてください。
肺炎と風邪、何が違う?
風邪は、主に鼻やのどといった「上気道」にウイルスが感染して起こる炎症です。
一方、肺炎はもっと奥にある「肺胞」という、酸素と二酸化炭素を交換する小さな袋状の組織まで病原体が入り込んで炎症を起こしている状態です。

両者の最大の違いは、症状の激しさと続く期間にあります。 風邪であれば、鼻水やくしゃみ、のどの痛みが中心で、熱も38度くらいまで。数日から1週間程度で治まることがほとんどです。
ところが肺炎になると、38度以上の高熱が続き、激しい咳や色のついた痰が出て、息苦しさを伴うこともあります。風邪をこじらせて肺炎になることもあれば、いきなり肺炎を発症するケースもあります。
「風邪が長引いてるな」と思ったら確認してほしいこと
以下のような症状があれば、肺炎の可能性を考えてみてください。
肺炎の可能性がある症状
咳と痰が続く

肺炎の咳は激しく、なかなか治まりません。特に黄色や緑色、あるいは鉄サビのような色の濃い痰が出るようなら、細菌性肺炎の可能性が高まります。
高熱と悪寒

突然の高熱に加えて、ガタガタと体が震えるような悪寒を感じることがあります。ただし、高齢者では熱が出ないこともあるので注意が必要です。
息切れや呼吸の苦しさ

肺胞に炎症が起きると酸素の交換がうまくいかなくなり、「息が苦しい」「呼吸が速い」といった症状が出ます。階段の上り下りでいつもより息が切れるようなら要注意です。
胸の痛み

炎症が肺を覆う胸膜まで広がると、息を吸ったときに鋭い痛みを感じることがあります。
高齢者の「隠れ肺炎」が怖い理由
あまり知られていませんが、肺炎で亡くなる方の約97%以上は65歳以上の高齢者です。しかも高齢者の場合、典型的な「高熱」や「激しい咳」が出ないことが多く、これが発見の遅れにつながっています。
ご家族の方に気をつけてほしいのは、こんな「なんとなく変」なサインです。
高齢者の肺炎を疑うサイン
- なんとなく元気がない
- 食欲がない
- いつもよりボーッとしている
- 失禁してしまう
- 呼吸が浅くて速い
- のどがゴロゴロ鳴る
こうした変化は見過ごされがちですが、高齢者に多い「誤嚥性肺炎」の特徴でもあります。飲み込む力が衰えて、唾液や食べ物が気管に入ってしまうことで起こる肺炎です。
関連記事
原因によって症状の出方が違う
肺炎の原因となる病原体によって、症状にも特徴があります。
病原体によって異なる肺炎の症状
1.細菌性肺炎

(例)肺炎球菌など
最も多いタイプで、湿った咳、膿のような色の痰、高熱が典型的です。
2.ウイルス性肺炎

(例)インフルエンザ、新型コロナなど
乾いた咳、発熱、筋肉痛、全身のだるさが目立ちます。細菌性のような黄色い痰は出にくいのが特徴です。
新型コロナでは味覚・嗅覚障害が出ることもありましたが、最近(2025年12月時点)のタイプでは頻度が下がっています。
3.マイコプラズマ肺炎

子どもや若い世代に多く、「歩く肺炎」と呼ばれるほど比較的軽症のこともあります。
ただし、頑固な乾いた咳が長く続くのが厄介で、熱が下がった後も3〜4週間咳だけが残ることがあります。
肺炎を防ぐために今日からできること
肺炎は、かかってからの治療も大切ですが、「かからない」「重症化させない」予防が何より大事です。
ワクチン接種を受けましょう
ワクチン接種は医療の盾になります。インフルエンザワクチンは毎年接種することで発症や重症化を防げますし、65歳以上の方には肺炎球菌ワクチンが推奨されています。新型コロナワクチンやRSウイルスワクチンも、年齢やリスクに応じて検討してみてください。
口腔ケアをしましょう
意外と見落とされがちなのが口腔ケアです。特に寝る前の歯磨きが重要で、口の中の雑菌を減らすことで誤嚥性肺炎のリスクをぐっと下げられます。
関連記事
生活習慣を整えましょう
そして日々の生活習慣。禁煙は最も効果的な予防策の一つです。
タバコは肺の防御機能を壊してしまいます。手洗いや咳エチケットといった基本的な感染対策も引き続き大切ですし、しっかり食べて適度に体を動かすことで免疫力を保ちましょう。
関連記事
おわりに
「風邪が治らない」「熱はないけど元気がない」——そんなときは、肺炎を疑って早めに医療機関を受診してください。特に高齢者や持病のある方は、早期発見が命を救います。 日頃のケアとワクチンで、大切な肺の健康を守っていきましょう。
※本記事は医療情報を元に作成していますが、個別の症状や診断については必ずかかりつけの病院にて医師にご相談ください。
この記事を書いた人
- 特任副院長
- がん化学療法センター長
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本禁煙学会 禁煙専門医(禁煙認定専門指導者)
- 日本呼吸器学会 指導医
- 日本呼吸器学会 専門医
- 日本内科学会 指導医
- 日本内科学会 認定内科医
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医
- 日本臨床腫瘍学会 指導医
- 日本肺癌学会 暫定指導医
- 日本肺癌学会 中国四国支部評議員
- 日本呼吸器学会禁煙推進委員会SNSアドバイザー











