岡山済生会総合病院

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各種症例・治療紹介

乳がん

乳房の構造

乳房の構造

乳房は、出産時に乳汁を分泌する大切な役割をもつ皮膚の付属器官です。その中には「乳腺」と呼ばれる“(乳)腺組織”と脂肪組織,血管,神経が存在しています。

乳腺組織は、15~20の「腺葉」に分かれ、さらに各腺葉は多数の「小葉」に枝分かれして、小葉は乳汁を分泌する小さな「腺房」が集まってできています。各腺葉からは乳管が1本ずつ出ていて小葉と腺房と連絡しあいながら最終的に主乳管となって乳頭に達します。

乳がんは、この乳腺を構成している乳管や小葉の内腔(内側)を裏打ちしている上皮細胞から発生します。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを「非浸潤がん」、乳管や小葉を包む(基底)膜を破って外に出たものを「浸潤がん」といいます。従って非浸潤がんは、非常に早い段階で血管やリンパ管に侵入していないので原則的には他部位(リンパ節や内臓組織)に転移しません。特殊ながんとして乳管が開口する乳頭に非浸潤がんができたものを「パジェット(Paget)病」といいます。

同じ乳がんであってもその細胞の性格は異なり、おとなしいものから活発なものまで多種多様です。また、ひとつの腫瘍の中でも個々のがん細胞は性格が異なり、均一ではありません。

乳がんとはどんな病気でしょうか

乳がんに罹患する日本人女性の数は年々増加して、2015年の予測罹患数は90,000人が新たに乳がんになると推測されています。今や30~64歳の女性のがんの中で胃がんを抜いてトップになっています。また、他のがんが65歳を過ぎてから増加するのに対し、乳がんの罹患者数は40~65歳の働き盛りのやや若い世代に多いのも特徴です。

それに対し、死亡者数は2013年の統計では13,000人に増加し、女性のがんの中で大腸がん・肺がん・胃がん・膵臓がんに次いで5番目に位置しています。このことは、適切ながん治療を行えば死亡する確率が低いことを示しています。従って早い段階で乳がんを見つけるためにも定期的に「乳がん検診」を受けることが重要です。

最近では、下図のごとく「腫瘤」を自覚して医療機関に受診される頻度は徐々に減少し、乳がん検診を受けて無症状で発見される頻度が増加しています。

初発症状(複数該当を含む)

40年前頃にはがんと聞けば大きく切り取ったほうが安全と考えられ、乳がんでも乳房と腋の下のリンパ節や胸の筋肉まですべてを切除していました。しかし、欧米での臨床試験により1990年頃から本邦でも胸の筋肉どころか乳房の一部を切り取り、放射線を残存乳房に照射するという温存手術が行われ、現在で25年経過し、本邦でも生存率や局所再発率において有意差がないことが証明されています。

それは、薬物治療(抗がん剤などの化学療法剤やホルモン剤)の開発,放射線治療の機器の進歩,放射線診断の器械(マンモグラフィ・MRI・CT・PET)の進歩によるもので、現在はそれらを複合的に組み合わせて行うことにより生存率が延長し、5年相対生存率(がんと診断されてから5年生きていられる確率)が90%になりました。

乳がんの病期分類と治療成績

乳がんの病期分類(ステージ分類)2012年6月

ステージ0 がんが乳腺内にとどまっているもの(非浸潤がんやパジェット病)
ステージⅠ しこりが2cmから5cm以下でリンパ節に転移を認めないもの
ステージⅡA しこりが2cmから5cm以下でリンパ節に転移を認めないものや、しこりは2cm以下だが腋の下のリンパ節に転移を認めるもの
ステージⅡB しこりが5cm以下で腋の下のリンパ節に転移を認めないものと、しこりが2cmから5cm以下で腋の下のリンパ節に転移を認めるもの
ステージⅢA しこりが5cm以下で腋の下のリンパ節に転移を認めるもの、しこりの大きさにかかわらず、腋の下のリンパ節が周囲の組織と固定されているもの
ステージⅢB しこりの大きさにかかわらず、皮膚に浮腫や潰瘍を形成したり、胸壁に固定されているもの
ステージⅢC しこりの大きさにかかわらず、鎖骨の上や下のリンパ節に転移を認めるもの、胸骨の傍のリンパ節と腋の下の両方のリンパ節に転移を認めるもの
ステージⅣ 骨や肺など遠くの臓器に転移しているもの

乳がんの手術方法の時代的変遷

乳がんの手術方法の時代的変遷

2000年過ぎから温存手術が乳房切除術を上回りましたが、ここ2~3年、乳房再建術が保険適応になってから温存手術の頻度が減少し、現在では半々の頻度です。

センチネルリンパ節生検により乳がんの手術法は、以下のように分かれました。

  • 乳房 : 乳房切除 か 乳房部分切除(温存手術)
  • 腋の下(腋窩)リンパ節 : センチネルリンパ節生検 か リンパ節郭清

これらの組み合わせにより4通りの手術方法があります。

(1)胸筋合併乳房切除術(ハルステッド手術)
胸筋合併乳房切除術(ハルステッド手術)

乳房と胸の肋骨の上にある筋肉を切除します。

昔はこの方法が標準と考えられていましたが、現在では行われることは稀です。

(2)胸筋温存乳房切除術
胸筋温存乳房切除術

胸の肋骨の上にある大胸筋ならびに小胸筋を残して、乳頭を含めた乳房の皮膚の一部・乳腺全部・乳腺を取り巻く脂肪組織を切除します。現在、一般的に「乳房切除」といえばこの術式を指します。

※乳頭温存乳房切除術(NSM):
胸筋温存乳房切除術でさらに乳房の皮膚と乳頭を残し、乳腺全部と周囲の脂肪組織のみ切除します。多くは次の乳房再建に伴う組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)を筋肉下に留置します。欠点は乳頭の部分にわずかに乳腺組織が遺残します。

(3)乳房部分切除術(温存手術)
乳房部分切除術(温存手術)

乳頭・乳輪を温存し、乳房のしこりを含めて乳腺の一部分を切除します。通常、しこりの辺縁から1~2 cm離して切除されます。手術後、一定期間経過後残存乳房に放射線を照射します。

温存手術初期の頃は、(A)乳腺を扇状にやや大きく切除する扇状部分切除術と(B)円形に切除する円状部分切除術に分かれていました。

乳房再建術

人工的な異物(シリコンインプラント)や自分の組織(=自家組織,筋肉や脂肪組織)を使って切除された乳房(全部または一部)を形よく復元させる手術です。乳頭を再建することも可能です。2013年より人工異物(シリコンインプラント)が保険適応となりました。

現在では認定施設のみで行われており、がん治療をメインに扱う乳腺外科医と乳房再建を司る形成外科医がチームを組んで行います。

現在、当院はその認定施設であり、乳房切除術の患者さんには術前に乳房再建術のお話をしています。

センチネルリンパ節生検

昔は乳がんの手術に「腋窩リンパ節郭清」がつきものでした。それは脂肪組織に埋もれた豆(リンパ節)をごっそり周りの脂肪を含めて取り出していました。しかしながら多くの研究により、早い段階の乳がん(ステージの低い)では、リンパ節頻度が低いという事実とリンパ節郭清を受けた患者が一生の間に蒙るリンパ浮腫という後遺症の確率が25~35%存在するという事実に基づき、縮小する手術に移行されました。2010年より保険適応となりました。その内容は、手術中に一番転移しやすいリンパ節を種々の検査を用い数個取り出し(“豆”だけ取り出す、周りの脂肪は残す)、転移がなければリンパ節郭清を省略するというものです。術後のリハビリの必要性もなく、入院期間も短期間で済み日常生活に早く復帰できます。

岡山済生会総合病院で行っている乳がんの診療の実際

診察案内(検査について)

一般診療は外科で診ます。

乳がん検診は済生会総合病院の“健診センター”で行っております。

(1)初診時に行う検査
  1. 問診・視触診
  2. マンモグラフィ(レントゲン検査)
  3. 乳房超音波検査
    これらの検査で精査が必要と判断されたならば下記の検査で組織診断を行います。
  4. 穿刺吸引細胞診
  5. 針生検
  6. マンモトーム生検:マンモグラフィ下 と 乳房超音波下 の2通りがあります。
  7. 切除生検:局所麻酔による外来手術です。
(2)乳がんと診断がついた後の精密検査
  1. 乳房MRI検査 : 造影剤を用います。「がんの拡がり」と「多発病巣」のチェックを行います。また、対側乳房の病変の有無も調べられます。
  2. 胸部造影CT検査 : 肺・肝・骨などの内臓転移の有無,腋窩リンパ節腫大をチェックします。
  3. シンチ : 全身の骨への転移を調べます。
  4. PET-CT検査(他院) : 全身への転移,腋窩リンパ節転移の有無をチェックします。

手術について

● 当院の治療方針
乳房温存治療の適応外
  1. 乳房内多発病巣
  2. 乳頭浸潤
  3. マンモグラフィで広範囲の石灰化
  4. 炎症性乳がん
  5. 術後放射線が受けられない(膠原病や放射線治療の既往例、亀背など)
  6. 腫瘍径が3 cm以上(下図参照)
図
乳房温存術と乳房切除術の経年的変化
放射線治療について

乳がんでは原発病巣だけでなく再発転移部位にも照射します。

  1. 乳房切除後の胸骨傍リンパ節や鎖骨上リンパ節に対して
  2. 乳房温存手術後の残存乳房に対して
  3. 乳房切除後の胸壁に対して
  4. 骨転移病巣に対して(除痛も含めて)
  5. 脳転移巣に対して
ホルモン治療について

術前に針生検で採取したがん組織や手術で切除したがん組織を用いてホルモン・レセプターを調べます。レセプター陽性のがんにはホルモン療法が有効ですが、陰性の乳がんには2~3%の有効性しかありません。

  1. 抗エストロゲン剤(SERM) : タモキシフェン,トレミフェン
  2. LH-RHアナログ : ゴセレリン,リュープロレリン
  3. アロマターゼ阻害剤 : アナストロゾール,エキセメスタン,レトロゾール
  4. ピュア抗エストロゲン剤(SERD) : フルベストラント
  5. 合成黄体ホルモン剤 : メドキシプロゲステロン
化学療法について

化学療法に使用される薬剤は、通常の「抗がん剤」「分子標的剤」(がんだけに特異的に働く)に分けられます。

  1. 術後補助化学療法
    手術でがんを切除した後に目に見えない隠れたがん細胞を薬で叩くことによって再発を防止します。手術時の組織検査により総合的に判断して投与の有無を判定します。最近では、ホルモン陽性の方に抗がん剤投与が必要かどうか遺伝子検査をして投与の是非を調べる検査(Oncotype DX)も自費診療で希望により行っております。
  2. 術前化学療法
    術前にがんが進行しすぎて手術がしにくいような大きな乳がん(ステージⅢA・B・C)に対して、強力な化学療法を行い、がんやリンパ節転移を小さくしてから手術をする治療です。特に腫瘍径が3 cm以上の場合、術前に抗がん剤を投与し縮小させて温存手術を図ります。
  3. 再発時の化学療法
    術後に使用した有効な抗がん剤、または他の新規の抗がん剤を使用します。
  4. その他の薬物治療
    1. トラスツズマブ=ハーセプチン(分子標的剤) : 術前術後に、また再発時にも使用します。
      ペルツズマブ=パージェタ : ハーセプチンが効きにくくなったときに併用で使用。再発時。
      カドサイラ=ハーセプチン+エムタンシン(抗がん剤)の併用薬です。再発時に使用。
      ベバシズマブ=アバスチン:再発時に抗がん剤と併用で使用します。
      エベロリムス(内服)=アフィニトール : ホルモン剤との併用。再発乳がんの治療
    2. ビスフォスフォネート製剤 : ゾメタ 骨転移に伴う疼痛緩和の治療
      デノスマブ製剤 : ランマーク 骨転移に伴う疼痛緩和の治療
手術後・退院後のこと

手術が終了し退院された後は、かかりつけ医と当院とが協力しながら治療に当たります。化学療法・ホルモン療法・放射線療法などを組み合わせて、その人に一番適した治療をしていきます。

年に数回の血液検査と画像検査(乳房超音波、CT、マンモグラフィ、骨シンチ、PET-CTなど)を組み合わせて行います。外来通院のフォローアップは5年間がひとまずの目安になります。それまでは調子が良くてもきちんと通院することが大切です。そし、5年以降10年までは年1~2回の定期検診でフォローアップしています。場合によってはリスクの高い人には5年経過してもホルモン治療を延長する場合があります。

  1. リハビリ
    乳房温存手術でセンチネルリンパ節生検が行われた方は特別なメニューの必要はなく、数日で日常生活に戻れます。
    腋窩リンパ節郭清を行われた方は、手術前(時に術後)にリハビリ担当医の診察を受け手術後には決められたメニューにそって理学療法士や看護師の指導でリハビリを行います。リンパ浮腫予防に関する説明も行います。
  2. リマンマ
    乳房切除が行われた方には、外見を整えやすくするような補整下着の紹介などをしています。乳がん認定看護師にご相談ください。
  3. りんごの会(岡山済生会総合病院で治療を受けた患者さんの会)
    手術後の不安や疑問について語り合うことで、より豊かな日常生活が送れるようにと、患者会があります。

    • 相談会は現在、新病院に移転のため検討中です。
    • 毎年秋の第2土曜日には、医師の講演会やがん体験者の話などを聴く会を開いています。終了後はそこで知り合った仲間と食事を共にしながら語り合ったりして、楽しいひと時を過ごしています。

    また、毎年春には温泉行楽の会を企画しています。行事の詳細は希望されている対象者には連絡しており、初回は手術後退院時に病棟看護師より案内を説明しております。

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