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肺がんのステージ(病期)と生存率について

胸を押さえる女性のイメージ

肺がんのステージ(病期)とは何でしょうか。またステージ(病期)ごとに症状や治療法は変わってくるのでしょうか。このページでは肺がんのステージ(病期)について、わかりやすく解説します。

1.肺がんのステージ(病期)について

肺がんと診断をされた際、医師から「ステージ(病期)」という言葉を聞くことがあるかもしれません。がんのステージ(病期)とは、がんの進行の程度を示す言葉です。

ステージ(病期)を正しく理解することで、現在や今後予想される病気の状態の見通しを立て、医療者と協力して適切な治療計画を立てることができるようになります。
しかし、このステージ(病期)は、いったいどのように決定されるのでしょうか。

肺がんではがん細胞のできた場所、大きさ、がんの広がりの状態などを調べることでステージ(病期)が決定されます。

肺がんのステージ(病期)決定にはTumor(腫瘍)、Nodes(リンパ節)、Metastasis(転移)の頭文字をとったTNM分類が主に使用されます。これは、がんの位置と大きさ(T)、リンパ節への転移の有無(N)、そして体の他の部位への転移の有無(M)を判断するのに役立つシステムです。

肺がんのTMN分類:Tはがんの位置と大きさ、Nはリンパ節への広がりの有無、Mは他の部位への転移の有無を表す

T、N、Mの分類が決まると、それらを組み合わせて、がんの全体的なステージ(病期)が決定されます。病期は通常、0期、I期、II期、III期、IV期と定義され、0期が最も初期の段階で、IV期が最も進行した段階となります。

一般的に、ステージ0(0期) はがんが粘膜内(上皮細胞内)にとどまっており、リンパ節には転移していない状態、ステージ1 (Ⅰ期)はがんが肺の中だけにあり、リンパ節への転移はない状態、ステージ2 (Ⅱ期) は近くのリンパ節に転移している状態、またはリンパ節転移はないが肺の中のがんが大きい、ステージ3(Ⅲ期)は肺の周りの組織や重要な臓器に広がっているか、離れたリンパ節にも転移している状態、ステージ4(Ⅳ期)は離れた臓器に転移していたり、胸水にがん細胞がみられたりする状態です。
(専門的に言うと、I期はIA1・IA2・ IA3・ IBに、II期はIIA・ IIBに、III期はIIIA・ IIIB・ IIICに、IV期はIVA・ IVBに細かく分類されています)。

※TNM病期分類は、医療従事者ががんの程度を判断し治療方針を決定するためのツールであり、患者さんの予後に関する情報を直接的に提供するものではありません。予後の判定には、その人の全身状態、がんの種類、治療への反応など、他の要因などが複雑に関係します。

※TNM分類やステージに関するより詳しい資料は下記のページをご覧ください。

2.肺がんのステージ(病期)と症状

肺がんの症状は、がんの進行度合いと腫瘍の場所によって異なります。大まかに言うと、肺がんの症状は以下の2つに分けられます。①原発巣や転移したリンパ節による症状と、②遠隔の臓器への転移による症状です。①原発巣や転移リンパ節による症状としては、咳や痰、血痰(けったん)などの呼吸器の症状があります。②遠隔の臓器への転移による症状としては、骨への転移による痛みや脳への転移による神経系の症状が含まれます。肺がんの進行度に応じて、以下に挙げる症状が現れる可能性があります(ただし、個人によって症状の有無は異なる場合があります)。

ステージ1(Ⅰ期) がんは肺の中に限定されているため、症状は現れにくいです。
ステージ2(Ⅱ期) 症状はないことが多いです。
ステージ3(Ⅲ期)

胸膜やリンパ節に転移している場合が多く、そのための症状があらわれることがあります。

  • 息苦しさ
  • 胸の痛み
  • 咳・痰
  • 発熱
  • 声のかすれ(嗄声)
  • 嚥下障害
  • 顔、首、腕の腫れ(上大静脈が圧迫されて狭くなっているときに起こります)
ステージ4(Ⅳ期)

肺以外の臓器に転移している場合が多く、上記の症状に加えて転移先の臓器によってさまざまな全身の症状が出ることがあります。

  • 骨(特に背中、腰、肋骨)の痛み・骨折(骨転移がある場合)
  • 頭痛・めまい(脳転移がある場合)
  • 吐き気と嘔吐
  • 混乱や精神機能の変化
  • 食欲不振
  • 黄疸・腹水(肝転移がある場合)
  • 体重減少

肺がんの患者さん全員がこれらの症状をすべて経験するわけではなく、またここに記載されていない症状があらわれる患者さんもいます。
心配な症状が続くようであれば医師にご相談ください。

※ステージ毎の症状については、下記のページでより詳しく解説しています。

3.肺がんのステージ(病期)と治療法選択

肺がんの治療法は、がんのステージ、腫瘍の位置、肺がんの種類、患者さんの全般的な健康状態など、いくつかの要因によって決まります。ここでは、肺がんの各ステージにおける治療法の選択肢について一般的な概要を説明します。

※肺がんの組織型(がんの種類)についてはこちらの記事をご覧ください。

非小細胞肺がんの場合:

非小細胞肺がん(NSCLC)に対する主な治療法は、手術、化学療法(抗がん剤)、放射線療法、またはこれらを組み合わせて行われます。早期の非小細胞肺がん(ステージ1, 2)に対しては手術が選択されることが多いです。局所進行期(ステージ3)には化学療法や放射線療法がよく用いられます。さらに進行したステージ(ステージ4)では、主に化学療法が用いられますが、他の治療法も使用されることがあります。

分子標的薬は、がん細胞の増殖や分裂に関与する特定の遺伝子やタンパク質を標的とする新しいタイプの治療法です。免疫療法は、体の免疫システムががんと闘うことを手助する新しい治療法です。

非小細胞肺がんの種類と病期によって、どのような治療が必要かは医師が判断し、患者さんと治療チームが一緒になって決定します。

ステージ1(Ⅰ期)
手術 ステージ1の肺がんでは、一般的に手術が優先的に考慮されます。手術の目的は、がん全体と周囲の健康な組織の一部を取り除くことです。具体的な手術方法には、肺の一部を取り除く方法(楔状切除、区域切除)や、肺の一つの大きな部分を全体的に取り除く方法(肺葉切除)などがあります。
放射線療法 放射線療法は、手術ができるほどの体力がない患者さんに対して、単独で行われることもあります。
定位放射線療法(SBRT) SBRTは手術が適応できない患者さんの小さな早期腫瘍に対して、高線量で精密な放射線を照射する治療法です。
補助療法 再発のリスクを最小限に抑えるために、手術前後に化学療法、分子標的薬治療、免疫チェックポイント阻害(そがい)剤などを使用する場合があります。
ステージ2(Ⅱ期)
手術 腫瘍とその近くのリンパ節を切除し、手術後に化学療法 (抗がん剤) をすることも多いです。
放射線療法 放射線療法は手術ができるほどの体力がない患者さんに対して、単独で行われることもあります。
ステージ3(Ⅲ期)
手術 手術では肺の一部を切除することもありますが、この段階での手術の目的は多くの場合、病気を完治させることではなく、症状を軽減し進行を遅らせることです。
放射線療法 放射線療法は、手術と併用されることもあれば、単独で行われたり、あるいは化学療法と併用で行われたりすることもあります。
化学療法(抗がん剤) 化学療法はがん治療の一種で、薬物を使ってがん細胞を死滅させる治療法です。化学療法は、がんのステージや患者さんの健康状態に応じて、手術や放射線療法との併用や単独での治療が行われることがあります。
ステージ4(Ⅳ期)
化学療法(抗がん剤) ステージIV期の肺がんでは化学療法が優先されます。この目的は病気の進行を遅らせ、症状を和らげ、生活の質を向上させることです。また痛みや呼吸困難などの症状を和らげるための緩和ケアも選択肢のひとつです。
分子標的療法 分子標的薬は、特定の遺伝子やタンパク質を標的としてがん細胞の増殖や分裂を抑制する治療法です。肺がんの種類や特定の遺伝子変異の有無によって、単独の治療として使用されることもあります。また、化学療法と併用されることもあります。
免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤) 免疫療法は、身体の免疫システムを活性化させてがん細胞の増殖を抑える治療法です。肺がんの種類やPD-L1という検査の結果に基づいて適用されることがあります。免疫療法は単独で使用されることもありますし、抗がん剤と併用されることもあります。
放射線療法 放射線療法は、ステージIVの肺がん患者さんの症状の抑制と疼痛の緩和を目的として使用されることがあります。

小細胞肺がんの場合:

肺がんは専門的には、TNM分類と併用して限局型と進展型に分ける分類法が使用されます。限局型は「病変が同側胸郭内に加え、対側縦隔、対側鎖骨上窩リンパ節までに限られており、悪性胸水、心嚢水を有さないもの」と定義され、がんのひろがりが放射線療法の可能な範囲にとどまっている状態です。進展型はそれ以上に進行している状態を意味します。

限局型: 化学療法と放射線療法の併用が標準的です。限られたケースで外科的切除が行われる場合がありますが、その場合でも術後の抗がん剤が使用されます。

進展型: 抗がん剤を使った化学療法が主な治療法となります。最近では、免疫チェックポイント阻害薬という新しい薬も併用されることがあります。

ここでは一般的な治療法について説明しましたが、肺がんの治療計画は患者さんごとによって異なります。呼吸器外科医、呼吸器内科医、腫瘍内科医、放射線腫瘍医などの医療従事者からなる集学的チームが協力して、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定していきます。また治療法については、がんの進行や患者さんの健康状態の変化に応じて調整されることもあります。

4.肺がんのステージ(病期)と5年生存率

「5年生存率」とは、肺がんと診断されてから5年後に生存している人の割合を示す指標です。肺がんの実際の5年生存率は、がんのステージ、腫瘍の位置、肺がんの種類、患者さんの全般的な健康状態など、いくつかの要因によって異なる可能性があります。

以下は、日本における肺がんの各ステージにおける5年生存率(相対生存率※)の目安です。

※相対生存率:競合する死因(他の病気等による死亡)の影響を取り除いた生存率です。主に、がん対策の評価において、がんの影響をみるときに用います。

肺がん5年生存率グラフ

1年 2年 3年 4年 5年
A:男女:Ⅰ期:全年齢:全体 95.0% 88.4% 82.4% 77.5% 73.1%
B:男女:Ⅱ期:全年齢:全体 84.3% 68.3% 58.5% 51.6% 46.0%
C:男女:Ⅲ期:全年齢:全体 69.3% 46.8% 35.6% 29.5% 25.3%
D:男女:Ⅳ期:全年齢:全体 39.1% 19.9% 12.3% 8.6% 6.4%

出典元:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」
https://hbcr-survival.ganjoho.jp/

これらの数値は推定値であり、肺がん患者の実際の5年生存率はがんのステージ (病期)、腫瘍の位置、肺がんの種類、患者の全身状態など、いくつかの要因によって左右されることがあります。さらに、治療法の進歩や肺がんの早期発見により生存率は向上しているため、これらの数値は時間の経過とともに変化する可能性があります。

特に、進行がんに対する抗がん剤治療(分子標的薬剤・免疫チェックポイント阻害剤)の進歩により、過去10年間で急速に生存率が改善しています。実際、岡山済生会総合病院が国立がん研究センターに提出したデータによると、ステージ4の5年相対生存率は、15.0%(2013-2014年5年生存率)でした。

用語集:岡山済生会総合病院作成『がん基本用語集』より

原発巣(げんぱつそう)
がん細胞が最初に発生した場所。例えば肺がんの原発巣は肺です。


転移(てんい)
がん細胞が最初に発生した場所 (原発巣)から、血管やリンパ管に入り込み、血液 (血行性)やリンパ液の流れ (リンパ行性)に乗って別の臓器 (肺、肝臓、脳、骨など) やリンパ節に移動し、そこで増えること。移動した場所を「転移巣」と言います。 ・血行性転移→肺転移、肝転移、脳転移、骨転移など ・リンパ行性転移→リンパ節転移、がん性リンパ管症など


浸潤(しんじゅん)
がんが周囲の組織に染み込むように侵入し広がっていくこと。


縦隔(じゅうかく)
胸の中心にある左右の肺の間にある空間のことです。胸骨の後ろ、背骨の前、両側の肺の間に位置しています。縦隔には、多くの重要な臓器や組織が含まれています。たとえば、心臓や大血管、食道、気管、神経などがあります。


上皮内がん
がん細胞が臓器の表面や管状の臓器の内側を覆っている上皮の細胞内にとどまっているがん。


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参考サイト

日本肺がん学会(https://www.haigan.gr.jp/)
がん情報サービス(https://ganjoho.jp/public/index.html)

この記事を書いた人

川井治之

川井 治之(かわい はるゆき)

診療科:呼吸器内科、がん化学療法センター

専門分野:呼吸器疾患(肺がん)

資格:日本内科学会認定内科医、総合内科専門医、指導医 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、指導医 日本呼吸器学会呼吸器専門医、指導医 日本禁煙学会指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 公認心理師 日本肺がん学会中国四国支部評議員 緩和ケア研修会修了 臨床研修指導医養成講習会修了

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