岡山済生会総合病院

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各種症例・治療紹介

肝胆膵領域がんと腹腔鏡下手術について

はじめに

1985年にMuheらによってはじめられた腹腔鏡下胆のう摘出術は、1990年に日本に導入されました。それ以降、本邦では腹腔鏡下手術が急速に広まり、現在、腹腔鏡下手術が胆のう摘出術の標準手術となっています。当院でも1991年より腹腔鏡下胆のう摘出術を取り入れ、現在、年間180例前後の手術を行っています。また、早期の胃がん・大腸がんからはじまった消化器がんに対する腹腔鏡下手術も、次第に進行がんへと適応拡大がされつつあり、年間90例前後行われています。近年、腹腔鏡下手術はその手術器具が急速に進歩し、それに伴ってさまざまな手術が可能となってきました。
当院でも今までに蓄積した豊富な開腹手術の経験をもとに、早い時期から肝胆膵領域の腹腔鏡下手術に積極的に取り組んでいます。

胆のう

ご存知のとおり胆石症に対する腹腔鏡下胆のう摘出術は、完全に標準手術として確立されています。当院では胆石症に対する腹腔鏡下手術は5~6日間の入院治療とし、年間180例前後の手術を行っています。また、急性胆のう炎に対しても、中等症以上の症例や、軽症でも初期治療に反応しない場合には緊急手術として腹腔鏡下胆のう摘出術を行っています。現在、胆のう摘出術では腹腔鏡下から開腹手術への移行率は3.3%(2008~2009年)で、ほとんどの症例で腹腔鏡下手術の完遂が可能となっています。総胆管結石を伴う症例では、経口内視鏡による総胆管結石除去(EST,EPD)を行った後、腹腔鏡下胆のう摘出術を行うことを第1選択としています。しかし、経口内視鏡では結石除去が困難な症例においては、腹腔鏡下手術で総胆管結石の除去を行うことも可能です。胆のうポリープなどの隆起性病変で、胆のうがんの可能性が低いものは腹腔鏡下胆のう摘出術の良い適応と考えています。また、胆のう摘出後に病理診断で胆のうがんと診断された症例でも、早期の粘膜がんと診断された症例は追加切除なく腹腔鏡下手術のみで全例無再発生存中です。

肝臓

腹腔鏡下肝切除は、まさに腹腔鏡下手術器具(特にエネルギーデバイス)の進歩により可能になった手術です。腹腔鏡下手術の際、視野を確保するために炭酸ガスを腹腔内に注入(気腹)しますが、その腹腔圧により肝実質切離に伴う出血が抑えられ、エネルギーデバイスを用いて肝切離を行うとほとんど出血せずに手術をすすめることができます。大きな開腹創が必要な肝切除を腹腔鏡下に行うことは、患者さんにとっては大変大きなメリットがあります。2010年4月から、腹腔鏡下肝切除が条件つきですが保険適応になったことからも、この手術の有用性が広く認められたことを示しています。しかし、肝切除は、万が一大血管を損傷すれば大量出血となる危険性もあり、安全に手術を行うために手術適応には慎重さが必要です。現在は、肝左葉(特に外側区域)と肝右葉の辺縁に位置し、大きさも5cm程度までとして、術前の肝機能とあわせて症例を選択しています。今後一層の安全性が確保されれば、適応範囲が拡大される可能性が高い術式と考えています。

膵臓

膵臓では、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)や低悪性度の神経内分泌腫瘍(NET)、漿液性のう胞腺腫など良性~低悪性度の膵腫瘍で、膵体尾部に存在する場合に腹腔鏡下膵切除術の適応としています。開腹手術と同様に、脾臓の温存が可能な場合には脾臓温存手術も行っています。一方、通常型の膵がんなど高悪性度腫瘍に対しては、腫瘍学的な見地から腹腔鏡下手術の有用性が明らかになっていないため、現在のところは適応外としています。

脾臓

特発性血小板減少症(ITP)など通常のサイズの脾臓の摘出は、腹腔鏡下手術の良い適応で、以前より多くの施設で行われています。しかし、このような疾患は比較的まれで、実際に患者さんの多い門脈圧亢進症を伴う巨脾の摘出手術は、腹腔鏡下手術の適応外としている施設が多いと思います。当院では、エネルギーデバイスの進歩に伴い、他施設に先駆けて巨脾に対する腹腔鏡下手術を行い、腹腔鏡下膵切除とともに全国学会のシンポジウム等で発表してきています。大きくなった脾臓は腹腔内でプラスティックバックに収納し、小さく破砕して摘出するため大切開は必要ありません。また、肝硬変のため脾機能亢進となり、血小板が減少している患者さんで、C型肝炎に対するINF治療導入目的や、安全に肝がんの治療を行うための先行治療として脾臓の摘出が必要となるケースが増加しています。手術侵襲の少ない腹腔鏡下脾臓摘出術は二次治療に速やかに移行できるため、患者さんにとって大きなメリットがあります。ただし、門脈圧亢進のため脾臓周囲~食道・胃の静脈瘤の発達が顕著な症例では、脾臓摘出に加え、食道~胃静脈瘤に対する胃上部血行郭清を付加したハッサブ手術を開腹にて行っています。

終わりに

腹壁を破壊せずに手術を行う腹腔鏡下手術は、患者さんにとって整容的な面だけでなく、早期に回復し社会復帰するという大きなメリットがあります。しかし、一方で安全に手術を行うということは、それ以上に大事なことです。特に、術中出血の多い肝胆膵領域の腹腔鏡下手術では、ときに開腹手術への移行を余儀なくされる場合があります。これらの点を患者さんに十分ご理解いただいたうえで、慎重に症例ごとの術式を検討し、十分説明し納得いただいたうえで手術を行っています。
当院は高難度肝胆膵外科手術を多数経験しており、日本肝胆膵外科学会(http://www.jshbps.jp/ )の高度技能医修練施設のA認定を受けています。肝胆膵の高度技能指導医3名(三村哲重特任参与、仁熊健文副院長、児島 亨医長)が中心となって担当しております。腹腔鏡下手術のみならず、日々進歩する肝胆膵領域の手術に対応して、安全で安心かつ高度な外科治療を目指しています。

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