ご存じですか?認知症の方に寄り添う「マフ」
柔らかい「マフ」が、認知症患者さんの不安をやわらげる
毛糸や厚手の布で作られた筒状の「マフ」。外側には編みぐるみや飾りがついていて、見ても触っても楽しめる、あたたかな手作り品です。イギリスで「Twiddle Muff」と呼ばれているものが起源で、日本でも介護や医療の現場で活用が広がっています。
私たちの病院では、このマフを認知症の方のケアに活用しています。

認知症マフの持つ不思議な力とは?
マフを使うことで以下のような効果が期待できるとされています。
認知症マフに期待される効果
- 点滴や酸素の管、心電図の線などを触ってしまうのを防げる
- 管や線に注意が向かないことで、動きを制限する処置を減らせる
- 触れることで心身の緊張が和らぎ、安心感が得られる
- 編みぐるみや飾りを見て楽しみ、気持ちが明るくなる
認知症の人が手をマフで包みこんだり、編みぐるみをさわったりすることで、 心身の緊張感が和らぎ、 安心感も得られます。
ある認知症患者さんには、目に入った物をついポケットにしまい込む癖がありました。でも、マフを渡すと「これがいい」と笑顔になり、リハビリにも一緒に持って行くなど、ずっと触って過ごされていました。
柔らかな毛糸に手を包まれることで、心身の緊張がほぐれ、安心感が広がる効果があります。
私たちにとっても、その笑顔は大きな励みとなっています。
一緒にマフ編みを始めてみませんか?
認知症マフは編み方が簡単なものも多いため、経験がない方でも比較的始めやすいです。
現在、インターネットで「認知症マフ 編み方」などと検索すると、さまざまなサイトで編み方の解説動画や編み図などが提供されています。ぜひご家族や地域の皆さんと一緒に、この温かい活動の輪を広げていきませんか?
下記の浜松医科大学のWEBサイトにも、マフに関する情報や編み方などが詳しく提供されていますので、ぜひご参考ください。
参考サイト
- 浜松医科大学 「Twiddle Muff(認知症マフ)活用ケアガイド Ver.2」
- 浜松医科大学 「Twiddle Muff(認知症マフ)活用ケアガイド 認知症マフを編んでみよう!」

一つひとつ、心を込めて
当院でお渡ししているマフはすべて手作りで、看護師や事務職員、看護学生など、さまざまなスタッフが集まって編んでいます。編み物の経験が浅いスタッフもベテランも、毛糸や飾りの寄付、編み方の指導など、さまざまな形で関わっています。入院中の患者さんが参加してくださることもありました。
「誰かが喜んでくれると嬉しい」
そう話しながら編んでくださったマフは、きっと受け取った方の心を温めてくれるはずです。
マフは認知症の方だけでなく、作り手や届ける私たちにも笑顔をもたらしてくれます。
これからも、心を込めたマフをお届けしていきます。
※本記事は広報誌「やわらぎ」(190号:2024秋号)に掲載したものをWEB用に再編集したものです。
この記事を書いた人
楠戸 裕子(くすど ひろこ)
資格
- 認知症看護認定看護師

この記事を書いた人
藤本 捷博(ふじもと かつひろ)
資格
- 認知症看護特定認定看護師
