各種症例・治療紹介

糖尿病とは

糖尿病とはどんな病気でしょう。当院糖尿病外来でお配りしている資料です。

糖尿病とは

  • 膵臓でつくられる「インスリン」というホルモンが不足したり、働きが悪くなったりしたため血液中のブドウ糖(=血糖)が異常に高くなる病気です。
  • 免疫の異常などにより膵臓の細胞が破壊されてインスリンが作られなくなる「1型糖尿病」と、インスリンは作られていても、量が不足したり、うまく働かなかったりするために血糖が高くなる「2型糖尿病」があります。

    【2型糖尿病の誘因】

    • 食べ過ぎ
    • 運動不足
    • ストレス
    • 加齢
  • 糖尿病は初期の頃には自覚症状がほとんどありません。しかし、血糖値の高い状態が長く続くと、目・腎臓・神経など全身の様々な臓器に障害(合併症)をもたらします(細小血管障害)。
  • また、糖尿病の患者さんは、血圧やコレステロールも高い場合が多く、それらが複合して血管の動脈硬化が早く進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険が高くなります(大血管障害)。
  • 糖尿病は正しい治療を受けることで、進行を抑え、合併症を防ぐことができます。しかし、「症状がないから」、「良くなったから」といって治療を怠ると、再び悪化してしまいます。自分の状態を良く知り、医師や糖尿病療養スタッフと相談しながら、糖尿病の治療を続けましょう。

 

血糖コントロールの指標

1)血糖値

  • 普通、正常な人の場合、空腹時血糖(早朝空腹時の血糖)は110mg/dl未満です。食後でも140mg/dlを越えることはあまりありません。
  • 空腹時で126mg/dl、食後で200mg/dlを越えていれば糖尿病型と判定されます。
  • コントロール目標は空腹時130mg/dl未満、食後180mg/dl未満です。

2)HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)

  • 過去1~2カ月間の平均血糖値を示す指標で、正常者の基準範囲は4.6~6.2%です。
  • 血糖のコントロール状態と相関し、血糖値が高い状態が続けば高値となります。糖尿病合併症予防のためのコントロール目標はHbA1c 7.0%未満です(詳細は下記参照)。

 

糖尿病の三大合併症

  • 糖尿病は治療をせずに放置しておくと、様々な合併症を引き起こします。代表的なのは、腎臓・目・神経の病気で、これらは糖尿病の「三大合併症」と呼ばれています。
  • 合併症を調べるための検査(尿検査、眼底検査、腱反射テストなど)を定期的に受け、早期に発見し、治療を始めることが大切です。
  • 血糖値をコントロールすることにより、合併症の発症を予防し、進行を抑えることができます。

三大合併症

(1)糖尿病性腎症

  • 腎臓は、血液中のいろいろな成分をこし分け、体内にたまった不要なもの(老廃物)を尿として排泄する「ろ過器」の役割を担っています。
  • 血糖値が高い状態が続くと、腎臓の血管が傷害され、ろ過機能が悪くなっていきます。それに伴い蛋白などの成分が尿の中に出てくるようになります。
  • 糖尿病性腎症が進むと、やがて腎臓の働きが非常に悪くなってしまいます。そのため、体の中から老廃物を排泄することができなくなり、人工透析が必要になります。

(2)糖尿病網膜症

  • 目の網膜にはたくさんの細い血管が走っています。血糖値が高い状態が続くと、血管がもろくなって出血したり、血流が悪くなったりするなどの障害が起こります。治療をせずに放置すると、網膜剥離や緑内障をきたし、失明に至るおそれがあります。
  • 初期の頃には自覚症状がほとんどなく、視力の低下、黒い点がちらつくなどの症状が現れるのは、ある程度進行してからです。自覚症状のない時期でも網膜には変化が生じているので、定期的に眼底検査を受け、早期に発見することが大切です。

(3)糖尿病性神経障害

  • 三大合併症の中でも比較的早い時期からみられます。高血糖が続くと、末梢神経や自律神経がおかされてしまいます。
  • 初期の症状としては、足のしびれがみられます。進行すると痛みがひどくなり、さらに進行すると痛みすら感じなくなります。そうなると、靴ずれやけがに気がつかず、小さな傷から潰瘍や壊疽などを起こす危険性が高くなります。
  • 他に下痢・便秘などの胃腸の不調、残尿感、勃起障害(ED)、めまいや立ちくらみ、不整脈などを起こします。

 

糖尿病と動脈硬化症

  • 糖尿病患者さんでは、動脈硬化が進行しやすく、脳梗塞や心筋梗塞の発症率が約3倍と高率です。動脈硬化は境界型糖尿病の時期から進行します。
  • 動脈硬化により脳・心臓・四肢の中~大血管が傷害され、脳梗塞・虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)・閉塞性動脈硬化症(下肢の血流低下)が起こります。三大合併症とともに糖尿病患者さんの生活の質や生命に重大な影響を及ぼしますので、動脈硬化を予防することが極めて重要です。
  • 動脈硬化には血糖の他、血圧、脂質、喫煙、肥満が関与し、危険因子が重なれば重なるほど動脈硬化は進行しやすくなります。
  • したがって、動脈硬化の予防には、血糖コントロールの他、血圧コントロール、脂質のコントロール、体重のコントロール、そして禁煙が重要です。
  • 喫煙は、動脈硬化を推進するのみならず、肺がんや慢性呼吸不全の原因ともなります。糖尿病患者さんはぜひ禁煙してください。

 

糖尿病の治療

  • 糖尿病治療の目的は血糖をコントロールして、合併症が起こるのを防ぐことにあります。
  • 糖尿病の治療の3本柱は「食事療法」「運動療法」そして「薬物療法」です。中でも食事療法は、治療のかなめとなります。

糖尿病治療の3本柱

【食事療法】

  • 糖尿病の食事療法は、病気を治すための特別な食事をとることではなく、「食べ過ぎず、栄養バランスの良い食事を、毎日規則正しくとる」ことです。この食事は、生活習慣病を予防し長生きするための健康食といえます。
  • 食事療法を上手に行うには、患者さんやご家族と、医師・栄養士など医療スタッフとの連係プレーが大切です。
  • 『糖尿病食事療法のための食品交換表』、『糖尿病性腎症の食品交換表』(いずれも日本糖尿病学会編)が良い手引きとなります。

【運動療法】

  • 2型糖尿病では、過食や運動不足によるインスリン抵抗性の増大(インスリンの働きが悪くなること)が発症要因となっています。運動には、インスリン抵抗性を改善する効果があります。
  • 糖尿病の運動療法の目的は、食べ過ぎや運動不足から起こってきたインスリン抵抗性を改善することにあります。
  • どのような運動を、いつ、どのくらい行うかは、主治医と相談しましょう。

【薬物療法】

  • 食事療法や運動療法だけでは、血糖をうまくコントロールできない場合は薬物療法を行います。
  • 薬物療法には、体内のインスリン不足を補うためにインスリン注射を行う治療と、飲み薬による治療の2つがあります。
  • 薬物療法を始めてからも、食事・運動療法を続けていくことが大切です。

 

血糖コントロールの目標

血糖コントロールの目標

治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する。

注1) 適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標とする。

注2) 合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする。対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満をおおよその目安とする。

注3) 低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする。

注4) いずれも成人に対しての目標値であり、また妊娠例は除くものとする。

日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド 2012-2013、血糖コントロール目標改訂版、25頁
文光堂より引用

 

血圧・血清脂質・体重のコントロール目標

  1. 血圧:130/80mmHg未満
  2. 血清脂質:
    • LDLコレステロール 120mg/dl未満
    • HDLコレステロール 40mg/dl以上
    • 中性脂肪 150mg/dl未満
  3. 体重:標準体重の維持(身長m×身長m×22)

 

低血糖とその対処法

1)低血糖が起こりやすい時

  • 食事を抜いたり、量が少なかったとき
  • 空腹時
  • 激しい運動をしたとき
  • インスリン注射や飲み薬が多すぎたとき
  • アルコールを多量に飲んだとき

2)低血糖の症状

  • 異常な空腹感・集中力の低下・イライラする感じ
  • 脱力感・目のちらつき・冷や汗・動悸・手足のふるえ

  ↓ 放置すると

  • 意識障害・けいれん・昏睡

3)対処法

スティックシュガー(5gのもの)を2本食べる。
※ただし、「α-グルコシダーゼ阻害剤」を内服している場合は、「ブドウ糖」を服用すること。
砂糖を食べた後、食事をきちんととる。

 

Sick day(シック・デイ)について

  • 糖尿病治療中の方が発熱、嘔吐、下痢などの他の病気になったとき、食欲不振で食事ができないときなどをシック・デイと呼びます。
  • このようなときには食事ができなくても著しい高血糖となることがあります。脱水に注意し、水分摂取を心がけて早めに病院を受診してください。
  • インスリンや内服薬の調節について、主治医と相談しておきましょう。

 

がん検診を受けましょう

  • 日本人の死亡原因の約1/3はがんです。
  • がんで症状が出るのはかなり病気が進んでからです。症状がないからと安心せず、年に1回はがん検診を受けましょう。
  • 糖尿病外来では、糖尿病の合併症について定期的にチェックを行いますが、がん検診を行っているわけではありません。病院に通院しているからと安心せずに、がん検診は必ず年1回受けてください。

 

糖尿病の患者会があります

  • 糖尿病の患者さんを対象とした全国組織の会として日本糖尿病協会があります。
  • 日本糖尿病協会の岡山支部・済生会病院分会として、「済生会なでしこ」が組織されています。講演会や食事会、歩こう会などを行っていますので、ご興味がおありの方は糖尿病スタッフまでお気軽にお問い合わせください。

 

参考図書および参考ホームページ

  • 『糖尿病食事療法のための食品交換表』 日本糖尿病学会編、日本糖尿病協会、文光堂
  • 『糖尿病性腎症の食品交換表』 日本糖尿病学会編、日本糖尿病協会、文光堂
  • 日本糖尿病学会 http://www.jds.or.jp/ 
  • 日本糖尿病協会 http://www.nittokyo.or.jp/ 

 

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