大腸がん

大腸がんの治療

大腸がんは、病巣を残すことなくきれいに切除すれば(治癒切除と呼びます)完治が期待できます。

病巣が粘膜内に留まる粘膜内がん(ステージ0期)では、 局所切除術で完治します。 病巣が粘膜下へ浸潤する浸潤がんでも治癒切除後の生存率は良好です。

大腸がんが他臓器に浸潤していたり、肝臓や肺に転移を認める場合にも切除が可能であれば予後が期待できます。病巣周囲のリンパ節も含めてがん病巣を残さずきれいに切除することが重要です。病巣をきれいに切除できない場合の成績は不良ですが、腸閉塞の処置や出血のコントロールのために手術(姑息切除と呼びます)が行われます。

大腸がんの治療成績

大腸浸潤がんの各ステージの説明と当院の生存率を記載します。カッコ内の数字が治癒切除5年経過後の生存率です。

  • ステージ1期(97%)…がんが大腸の壁内(筋層まで)に留まるもの
  • ステージ2期(92%)…がんが大腸壁を貫いて浸潤するが、リンパ節転移のないもの
  • ステージ3期(72%)…リンパ節転移のあるもの
  • ステージ4期(25%)…肝、肺、腹膜などへ遠隔転移のあるもの

大腸がんの年間手術件数

当院の2017年1月~2018年12月までの大腸がんの手術件数は452例でした 。 その内訳は、結腸がんが248例、直腸がんが204例でした。

その他の腫瘍(2014~2018年)
  • 小腸がん:5例
  • 消化管GIST:29例
  • 消化管カルチノイド:4例

1)結腸がんの手術248例(2017・2018年)(うち腹腔鏡下150例)

結腸がんの手術は、病巣と共に口側肛門側の腸管を10cmほど離して切除します。同時に周囲のリンパ節の切除(リンパ節郭清と呼びます)を行います。部位により以下の手術を行います。

  1. 結腸右半切除術:盲腸がん、上行結腸がん、一部の横行結腸がんなど
  2. 結腸左半切除術:下行結腸がん、一部の横行結腸がんなど
  3. 結腸部分切除術:横行結腸がんなど
  4. S状結腸切除術:S状結腸がん
  5. 大腸全摘除術:大腸ポリポーシスなど

2)直腸がんの手術204例(2017・2018年)(うち腹腔鏡下86例)

直腸は骨盤内の狭いところにあります。直腸の後面には仙骨があり、直腸の前面には、男性では膀胱、前立腺、精嚢、女性では膀胱との間に膣、子宮があります。直腸の下部は体壁を貫いて肛門を形成しています。骨盤内の臓器は、自律神経により排便、排尿、性機能などの大切な機能が調節されています。これらの機能や周囲臓器の温存が可能な場合と切除を要する場合があります。

(1)自律神経温存術

排尿機能や性機能を調節する神経は下腹部と骨盤内にある自律神経です。 神経を残して機能の温存をします。 自律神経温存術 は、日本で特に進んだ術式で、当院では10年以上前より積極的に取り組んできた術式です。 一方、がんの浸潤で神経が侵されているときには神経を含めて切除をしています。

術中写真 1

腸がんの切除後、まだリンパ節の十分な摘出は行っていない。


術中写真 2

神経や血管、尿管を温存して十分にリンパ節を摘出した。

(2)肛門括約筋温存術

術中写真 1

←下部直腸がんによる狭搾 ←肛門

肛門のすぐ口側に直腸がんによる狭窄像を認めます。


術中写真 2

←吻合部 ←肛門

直腸切除後に肛門とS状結腸との吻合を行いました。

(3)直腸切断術


(人工肛門の造設)

肛門や肛門に近い直腸に発生した浸潤がんでは、病巣を残さずきれいに切除するために自然肛門を切除して人工肛門を造設する手術を行います。人工肛門の指導を行う専門の看護師や教育ビデオ、患者会(もみじ会)などを通じてストーマ管理の自立に努めています。

(4)骨盤内臓全摘術

がんが膀胱や前立腺、子宮や膣、仙骨に浸潤しているとき、周囲臓器を一緒に切除します。骨盤内の大きながんや再発がんが適応になります。大腸がんの手術では、最も大きな侵襲を伴う手術です。

(5)経肛門的局所切除術

肛門近くの早期のがんに対して行っています。肛門を器具で広げてがんだけを切除します。リンパ節郭清は行いません。

3)腹腔鏡補助下手術

お腹に小さな穴を数か所開けて腹腔鏡を挿入し、モニター画面を観ながら体外より手術を行います。カメラによる詳細な観察が可能で、術中出血は少ない傾向です。手術時間は長めですが、お腹の創を小さくできるのが特徴です。

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