済生丸の概要
済生丸の歴史
済生丸一世号が昭和37年に誕生してから53年の間に、瀬戸内海島嶼部の運航に適した船体構造にするため、改造一世号、二世号、三世号へと段階的に進化してきました。現在はそのノウハウを最大限に生かした4代目となる「済生丸100」(平成26年1月15日に就航)が運航しています。新船の通称は、済生会創立100周年(平成23年)の時に建造を決定したことなどから決定しました
済生丸一世号
改造一世号
済生丸二世号(昭和50年7月就航)
済生丸三世号令和3年3月までの総航走距離は879,649㎞(地球約20週)、受診延人員は614,463人に及びます。
新船建造の経緯
三世号は平成2年2月の就航以来、20数年が経過し、定期検査や修繕等を手厚く行っていましたが、船体及び主機関の老朽化は巡回診療に支障をきたす恐れが出ていました。また、島への架橋等交通アクセス、医療事情や経済的な面など社会情勢が変化したことなどから、済生会本部において事業の廃止が検討されていました。 しかし、島民のアンケートから「済生丸」への期待が強くうかがえ、また地元自治体からも存続を望む声が大きく、岡山・広島・香川・愛媛県支部済生会の共同事業としての存続を決めました。ちょうどその頃、関係4県の地域医療再生計画で、済生丸の更新及び搭載する医療機器の整備に対し支援が受けられることになり、この決定が後押しとなり、平成23年8月に新船建造を決定しました。
新船は
- これまで瀬戸内海島嶼部の運航で蓄積した船体構造等のノウハウを生かすため、三世号を基本にした設計を検討
- 島民の高齢化に伴い、エレベーター等船内のバリアフリー設備の充実及び船体、機関、電気各部門にわたり技術革新やハイテク化に対応
- X線装置等のデジタル化及び乳房用X線撮影装置、生化学自動分析装置の導入など診療機能の強化
上記の内容などを基本的な考え方としました。
構造、設備機器等の比較
| 済生丸三世号 | 済生丸100 | |
|---|---|---|
| 着工 | 平成元年9月15日 | 平成25年4月8日 |
| 進水 | 平成元年11月28日 | 平成25年8月8日 |
| 造船所 | 寺岡造船(株) | 金川造船(株) |
| 全長 | 33.00m | 33.00m |
| 垂線間長 | 28.00m | 28.00m |
| 型幅 | 7.00m | 7.00m |
| 型深 | 3.00m | 3.30m |
| 計画満載喫水 | 2.00m | 2.00m |
| 総トン数 | 166トン | 180トン |
| 船級・規格 | JG船・4種 | JG船・4種 |
| 航行区域 | 沿海区域 | 沿海区域 |
| 最大搭載人員 | 船員5名、診療班24名、臨時乗員21名 (その都度申請要す) | 船員5名、診療班24名、臨時乗員21名 (その都度申請要す) |
| 航海速力 | 12.56ノット | 12.3ノット |
| 主機関 | 500PS×2基,2軸 | 500PS×2基,2軸 |
| 補機 | 100PS×2基 | 157PS×2基 |
| 発電機 | 80KVA×225V×60HZ×2基20KVA×225V×60HZ×1基 | 130KVA×225V×60HZ×2基40KVA×225V×60HZ×1基 |
| 清水造水装置 | なし | 1(3t/日) |
| 同燃料 | A重油 | A重油 |
| 船体構造 | 鋼製上部アルミ合金製 | 鋼製上部アルミ合金製 |
| レーダー(衝突予防装置) | 1 | 1 |
| バウスラスター | 推力0.8トン | 推力1.2トン |
| 音響測深器 | なし | 1 |
| 処置室 | 1 | 2 |
| 処置室 | 1 | 1 |
| 検査室 | 1 | 1 |
| 問診室 | なし | 2 |
| 採血室 | なし | 1 |
| X線装置 | 2 | 3(デジタル化) |
| 待合室 | 2 | 2 |
| 船員室 | 5 | 5 |
| エレベーター | なし | 定員4名(車椅子乗車1名+1名) |
| サテライトコンパス及び自動操舵装置 | なし | 1 |
| GPS航法プロッター装置 | 1 | 1 |
医療設備等
| レントゲン室 | 胃部透視撮影装置、一般撮影装置(胸部、整形外科等)、乳房撮影装置、画像ビューア |
|---|---|
| 臨床検査関係 | 超音波検査装置(腹部、頚部、乳房、膣等対応)、超音波検査装置(ポータブル型)、生化学自動分析装置、ヘモグロビンA1C測定器、血圧脈波検査装置、卓上遠心機、解析付き心電計、スパイロシフト(肺年齢計) |
| 一般診療用 | 自動血圧計、全自動身長体重計、卓上血圧計(水銀血圧計)、聴診器、打腱器、体温計、婦人科電動検診台、超音波骨密度測定装置、無散瞳型眼底カメラ、眼圧計、簡易視力計、オートレフラクトメーター、スリットランプ、顕微鏡、東大式照明灯、額帯鏡 |
| その他 | 携帯用酸素吸入器、AED、体重計(体脂肪計)、卓上型高圧蒸気滅菌器、薬用保冷庫、冷水器、液晶デジタルテレビ、DVDレコーダー、BS放送受信機 |
新船一般配置図
立面図
平面図
4代目済生丸の起工式


4代目済生丸の進水式

瀬戸内海の離島を巡回診療している「済生丸」の4代目となる新船の進水式が、8月8日、神戸の金川造船㈱吉田工場で行われました。進水式は今まで工場内で建造していた船を初めて海へ浮かべる儀式で、建造の過程で一番華やかな式典です。「君が代」の吹奏に続き、岡山県済生会の岩本支部業務担当理事が「済生丸」と命名、同支部の伊原木会長が支綱を切断すると、ロープにつながっていたお酒の瓶が船首に当って見事に割れ、同時に久寿玉が割れ、大量の紙テープ・紙吹雪などが舞う中、鳩が勢いよく羽ばたいていきました。船体は船台を滑り降り、あっという間に進水し、その後、向きを横に変えると「診療船 済生丸」の文字がしっかり見えました。ちょうど壇上に向かって海風が吹いていたので、お酒の香も運んでくれて見事な進水式を終えることができました。 新船は全長33m、幅7m、約190トン。航海速力は12ノット以上。定員は船員5人、診療班12人など計29人です。今後、航海機器の取り付けや配管・電機設備の整備など、艤装を行うとともに、X線関係機器や超音波画像診断装置などの医療機器を搭載し、海上試運転を経て26年1月に就航しました。「済生丸100」の就航披露式
平成25年12月6日、4代目済生丸が無事完成し、金川造船(株)から引き渡しを受けました。新船での診療開始前に多くの皆さまにその姿をご覧いただこうと、4県で就航披露式が執り行われました。最初に愛媛県内で、平成26年1月7日(松山港)、8日(今治港、西条港)、続いて岡山県内で10日(新岡山港)、14日(笠岡港)の2日間行い、 1月15日岡山県笠岡市北木島において、新船による初めての診療を行いました。その後、香川県内で1月27日(高松港)、広島県では2月15日広島大学生物生産学部付属練習船基地を会場として就航披露式を行い、大勢の方にご観覧いただきました。 新岡山港で就航披露を行った1月10日はこの冬一番の寒気が到来し、冷え込みの厳しい日でしたが、式典には、厚労省や岡山県知事、本部理事長をはじめ、多くの来賓の方々に、また、見学会には、国会議員や岡山県議会議員の方々にもお出でいただきました。昨年「済生丸」をモチーフにしたドラマが放送されたこともあり、今まで以上に関心を持っていただいたようです。
平成26年1月15日初めての診療のため 北木島へ就航した済生丸

済生丸の構造
「済生丸100」は、これまで島嶼部の運航で蓄積した船体構造等のノウハウを生かすため、三世号を基本とした設計で、全長33m、型幅7m、満水喫水2m(島の港の状況等からこれが限度)、総トン数180トン、航海速力は12.3ノット。船内の通路を車いすが通れるように広くし、エレベーターを設置するなどバリアフリー化を図り、X線装置もすべてをデジタル化、新しく乳房撮影装置も導入するなど、中規模病院の機能を備えています。
済生丸100の構造
構造、性能
| 船形 | 球状型船首、バウスラスター装備、2基2軸船 |
|---|---|
| 材質 | 鋼製及びアルミ合金製(上甲板以上) |
| 全長 | 33m |
| 垂線間長 | 28m |
| 型巾 | 7m |
| 型深 | 3.3m |
| 満載喫水 | 2m |
| 総トン数 | 180トン |
| 主機 | ヤンマーディーゼル機関 500PS×2基,2軸 |
| 発電機関 | ヤンマーディーゼル 157PS×2基 |
| 発電機 | 130KVA×AC225V×60HZ×2基 40KVA×225V×60HZ×1基 |
| 航海速力 | 12.3ノット |
| 定員 | 船員5、診療班12、その他12 |
装備
| 湾岸装備 | 鋼製ランプゲート、巾1.8m×長5.5m |
|---|---|
| 交通艇 | FRP製、25PS船外機付、定員5 |
| レーダー | JMA-3910-6型、15インチ10KW一式 |
| その他 | 放送、空調、救命各設備、清水造水装置 |
済生丸の設備
第一診察室
第二診療室・採血室
血液検査
マンモグラフィ検査
胃透視検査
胸部X線検査
血圧測定
心電図検査
肺年齢検査
腹部超音波検査
船内通路
船内エレベーター
バリアフリートイレ