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婦人科領域のがんは多種にわたりますが、代表的なものとしては子宮がんと卵巣がんがあります。
子宮がんは、子宮の入り口に発生する子宮頚がんと子宮の奥のほうで月経を起こす子宮内膜に発生する子宮体がん(子宮内膜がん)の2種類があります。以前は子宮頚がんの比率が高かったのですが、最近では、欧米と同じく子宮体がんが増加しつつあり、体がんは子宮がんの30%強を占めるようになっています。当院では、子宮体がんが50%強を占めています。
40歳代から50歳代に多いのですが、高齢婦人や稀には20歳代の方にも発生しています。子宮頚がんの発生要因としては、早期からの性交開始、乱交、早婚などがあり、また妊娠や分娩との関連では3回以上妊娠・分娩を経験した婦人に多いと言われております。さらに、最近では、性行為感染症であるヒトパピローマウイルスというウイルスの感染が発生原因の一つとして重視されています。
症状としては、初期ではほとんど自覚症状はありませんが、進んでくると出血、特に性交後の出血などが現れてきます。
子宮頚がんの進行期は進行するにつれて0期、Ia期、Ib期、II期、III期、IV期と分類されていますが、0期とIa期は初期がんと言われており、治療としては通常、子宮のみを摘出する手術(単純子宮全摘術)を行います。しかし、時にはこれから結婚や妊娠を望まれている婦人もおられ、これらの方には子宮の頚部の病巣を含めて子宮頚部を円錐状に切除する円錐切除術を行い、子宮を温存し妊娠・分娩の可能性を残す手術を行うことがあります。しかし、Ib期~II期では骨盤内のリンパ節への転移は約10%前後起こっており、子宮を含めて、がんが広がりやすい子宮周囲の組織や膣の一部をリンパ節と同時に摘出する広汎性子宮全摘術が必要となります。この手術では輸血も必要となり、婦人科の手術で最も大がかりな手術で、年齢的には70歳未満の婦人に行っています。III期以上の方やIb~II期でも70歳以上の方などでは放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)を組み合わせた治療を行っています。なお広汎性子宮全摘術を受けられた方でも、リンパ節や子宮周囲の組織に転移が認められた場合は、 手術後に放射線療法や化学療法の追加が行われます。
当科では、平成4年から平成19年の16年間に122例の子宮頚がんを治療しており、5年生存率は0期~I期では100%と非常に良好です。しかし、II期になると66.7%となり、進行期が進むに従って生存率は低下してきています。したがって、早期発見・早期治療がいかに重要かお分かりいただけると思います。0期のがんはほぼ100%治ります。1年に1回は子宮がん検診を受けて早期発見に努めることが何よりも大切ですので、積極的にがん検診をお受けになることをお勧めします。
好発年齢は50歳代が最も多いがんで、40歳未満の婦人に発生することは稀です。前に述べましたように近年、わが国でも増加してきているがんです。その要因としては食生活などの欧米化、肥満の増加や、初潮が早くなり逆に閉経が遅くなったりして卵巣のホルモン活性が活発になった事などが考えられています。特に、更年期以降の婦人で肥満、高血圧、糖尿病を合併している場合は子宮体がんのリスクが高くなると考えられています。
症状としては不正出血で、特に閉経後の出血には注意が必要です。一般的に子宮体がんの進行は子宮頚がんに比べて遅いと考えられており、約70%の方はがんがまだ子宮内に留まっているI期(初期)の状態で発見されています。
子宮体がんも頚がんと同様に0期からIV期まで進行期に応じて分類されています。I期とは前述のように子宮体部のみにがんが留まっている状態ですが、II期以上になるとがんは子宮体部の外に進展して、IV期ではがんが直腸や膀胱に広がったり、肝臓や肺などの遠隔臓器に転移している末期状態となっています。
体がんの治療は手術が主体となっており、I期では単純子宮全摘術とリンパ節摘出術、II期では広汎性子宮全摘術とリンパ節摘出術を行いますが、I期の一部を除いてリンパ節は腹部の大動脈周囲のものも摘出しますので、大がかりな手術となります。III期以上のがんに対しては、個々の病状に応じて手術、抗がん剤投与、時には放射線療法などを組み合わせた治療を行っています。なお、I期やII期の体がんでも手術後の病理組織検査でがんの広がりを十分調べて、必要に応じて化学療法(抗がん剤の点滴や内服)を施行したり、さらに体がんの中には黄体ホルモンの大量内服療法が有効な例もあり、そのような方には黄体ホルモン内服療法を行っています。
当科では平成4年から平成19年の16年間に129例の子宮体がんを治療しておりますが、5年生存率は0期では100%、I期85.7%、II期100%と良好ですが、III期になると50%に低下し、IV期では0%です。やはり、頚がんと同様に早期発見・早期治療が重要で、1年に1回は体がん検診を受けたいものです。体がんの検診は子宮の奥に細いブラシ状の器具を挿入して、子宮内膜の細胞を取ります。少し下腹部の異和感や軽い痛みを感じたり、検査後少量の出血があることがありますが、いずれも軽いもので心配はいりませんので進んで検査をうけるようにいたしましょう。
一般に卵巣がんは40歳以後の婦人にできやすいのですが、稀には20歳前後の若い人に発生しやすいタイプの卵巣がんもあります。
卵巣がんは初期には症状は全くと言っていいほど現れず、ある程度以上卵巣にできた塊が大きくなると、下腹が張る、あるいは重いと訴えるようになりますが、痛みは意外と少ないものです。したがって発見された時には相当進行したがんになっていることが多いのが特徴です。早期発見のためには子宮がん検診のとき、内診や超音波検査で卵巣が腫れているかどうか調べることが重要となります。
卵巣がんの発生は、食生活などの生活環境の変化などが伴ってか、わが国で過去10年でほぼ倍増しています。初期のがんでがんが卵巣内に止まった状態の場合は、手術で完全に取りきれてしまうこともありますが、しかし、前に述べたように半数以上の人が発見された時点ですでにがんがお腹の中に散らばったがん性腹膜炎という状態となっています。また、多くの人はお腹の中に腹水と呼ばれる液体が溜まっています。
治療の基本は、手術によって可能な限りお腹の中に散らばった腫瘍を取ることです。具体的には子宮、卵巣、卵管はもちろんのこと、骨盤内や腹部の大動脈周囲のリンパ節、さらにがんが転移しやすい大網という腸の表面を覆う膜を摘出します。時には、お腹の中に散らばったがんの塊を取るために、腸の一部を切除することが必要となり、婦人科領域の手術では最も大がかりな手術の一つと言えます。なお、がんが卵巣内に止まっているごく初期の状態で、まだお子さんを望まれる婦人では、がんになった方の卵巣と卵管を摘出するのみで、子宮や対側の卵巣や卵管を残し、お子さんを産める状態を維持することも状況によっては可能です。しかし、一般的に進行したがんでは手術後にお腹の中に残った腫瘍を抗がん剤を使用して治療することが必要となります。抗がん剤の種類はいくつかあり、患者さんのがんの種類に一番適した抗がん剤を使用していますが、最も多く使用されるのはタキソールとパラプラチンという抗がん剤を組み合わせた治療を、病状に応じて大体1か月に一度の割合で3回から6回くらい行います。この新しい治療でお腹に散らばった腫瘍が完全に消えてしまうことも少なくなく、以前に比べ改善度は増しています。
抗がん剤には副作用がつきものです。吐き気、脱毛、白血球や血小板の減少などは少なからず発生する副作用ですが、現在では副作用を軽減させる薬も開発されており、以前のように強い吐き気に悩まされたり、高度の白血球減少で危険な状態になることは少なくなりました。
当科では、平成6年から平成19年の間に140例の卵巣がんの治療を行っております。卵巣がんの進行度は初期のI期から末期のIV期の4段階に分類されていますが、当科での治療成績は5年生存率(治療から5年経過して生存している割合)でみると、I期では93.7%と高率ですが、IV期では9.1%の低率となり、治癒率が向上したと言っても進行したがんでは亡くなられる方も多いのも事実で、早期発見・早期治療が重要となります。