内視鏡的粘膜切除法(EMR)は早期胃がんの治療法の一つです。以前より、早期胃がんの中でも病変が粘膜にとどまっていて、大きさが2センチ以下で、胃がんの組織型が分化型で、がんの部分に潰瘍がない、という条件が満たされればリンパ節転移の可能性が極めて低いとされていましたので、この治療で治癒させることが可能です。
近年前述の条件を満たさない病変でもリンパ節転移の危険が少ない病変、たとえば粘膜内の病変で病変部に潰瘍がなければ2センチ以上の大きさでも内視鏡的治療で治癒させることが可能となりました。しかし、病変部が完全に粘膜内にとどまっているかどうかを正確に判定するためには病変を一塊で切除すること(一括切除)が必要です。従来のEMRという方法では2センチ以下の病変を一括切除するのが限界でした。
そこで、数年前から全国の多くの施設で導入されている方法が内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)です。この治療法であれば内視鏡専用の高周波ナイフ(当院では主にITナイフを採用)を使用して、確実に病変を一括切除することが十分可能になりました。このため、病変が完全にとりきれているかどうかを顕微鏡で検査(病理検査)して、正確に判定することも可能になりました。その結果、完全に切除できていれば経過観察とし、再発や転移の可能性がある病変であれば適切な追加治療を選択することが可能になりました。
2004年度よりESDを本格的に導入し、現在までに300例以上の胃ESDを行っております(2007年度は75例)。
導入当初は多くの施設で偶発症(術後出血、穿孔)が問題でしたが、当院では慎重に手技を行うことや、食事開始前に内視鏡で治療部潰瘍の確認を行うことによって、偶発症予防対策を行っています。入院はクリニカルパスを導入しており、治療後入院期間は6日間です。
長期的な成績に関してはまだ不明な点もありますが、治癒切除と判定されている方に関しては遺残再発はゼロです。しかし、胃がんの場合、治療した部位とは異なる場所に新たにがんが発見される場合も少なくなく、定期的な内視鏡検査は非常に重要で、退院後2カ月以内に一度、その後は病変部の状態に応じて半年から1年ごとの内視鏡検査を行っています。 |