岡山済生会総合病院
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胃がん
ここでは「胃がん」の治療についてご紹介しています。
I 外科的治療

 胃がんの治療は、現在でも病巣を切除することが最も有効です。切除方法は、内視鏡による切除と開腹(または腹腔鏡下)による切除に大別されます。胃がん検診による早期発見のおかげで、内視鏡で切除できる方が当院でも年々増加しています。しかしその一方で、より進行した胃がんに対する開腹手術もまだまだ多いのが現状です。なお、当院の全開腹手術例の5年累積生存率は73.3%です。

 開腹(または腹腔鏡下)手術は、胃がんの病巣を含めた胃切除、周囲のリンパ節の摘出(リンパ節郭清)、さらに食物の通り道の作り直し(再建)を行うもので、これらの一連の操作が基本的な内容となります。

 他臓器への転移などにより、肉眼的にがんをとり切ること(根治切除)が望めない場合は、がんからの出血の危惧やがんによる狭窄症状を取り除きQOL(生活の質)の向上を図る目的で、胃の病巣部分(原発巣)だけを切除する手術(姑息的切除)や、食物の通り道を作るだけの手術(バイパス手術)を行うことがあります。

1) 開腹手術

 具体的な手術方法は、2001年に日本胃癌学会が編集した“胃癌治療ガイドライン”(2004年4月改訂)に基づいて、病巣の部位・進行度(がんの大きさや深さ、リンパ節の腫れ具合など)によって決めます。しかし、高齢者や重い内臓疾患のある方には、手術による身体への負担(手術侵襲)が大きくなりすぎる場合があるので、個々の状況に合わせて決めています。また、腹腔鏡補助下幽門側胃切除も行っておりますが、本術式のメリット・デメリット、がんに対する根治性など、まだ十分に検討されていないところがありますので慎重に適応を選んで実施しています。

(a) 幽門側胃切除術(図1)

 日常最も多く施行している術式です。胃の中ほどから出口側にできたがんが対象で、一般的には胃の出口側を2/3 ( 〜4/5 ) 切除します。入院期間は術後平均13日。手術件数は2007年115例でした。

 再建は下記のごとく、二つの方法を主に行っています。
 ・ビルロートI法:残りの胃と十二指腸を直接つなぎ合わせます。
 ・ルーワイ法:十二指腸の断端は閉鎖し、残りの胃と小腸の始まりの部位(空腸)をつなぎ合わせる(吻合)方法です。残りの胃が小さい場合や食道裂孔ヘルニアのある方などは術後に胆汁などの消化液が食道に逆流し、逆流性食道炎をきたす可能性が高いので、これを予防するために本法を採用しています。

図1 幽門側胃切除術
(b) 噴門側胃切除術(図2)

 胃の上部1/3に限局した比較的早い時期のがんで、周囲のリンパ節転移の可能性が低い場合が対象となります。胃の上部1/3〜1/2を切除し、再建では主に食道断端と残りの胃を直接吻合(食道残胃吻合)します。術後に逆流性食道炎をきたしやすいことが予測される場合には、予防策として食道と残胃との間に小腸を挟む方法(空腸間置またはダブルトラクト法)を行うこともあります。入院期間は術後約2〜3週間。手術件数は2007年6例でした。

図2 噴門側胃切除術
(c) 胃全摘術(図3)

 がんが胃の広範囲に及ぶ場合、胃の上部や下部にがんが多発している場合、あるいは胃の上部1/3に限局していてもがんが胃の筋層を越えて深くもぐっている場合などが対象となります。がんが周囲の臓器までひろがっている場合は、脾臓や、膵臓の一部も合併切除することがあり、他の切除方法よりも手術侵襲が大きくなります。

 再建は、多くは十二指腸断端を閉鎖し、食道断端と挙上した空腸とを吻合しています(ルーワイ法)。入院期間は術後約2〜3週間。手術件数は2007年40例でした。

図3 胃全摘術
(d) その他の手術

 早い時期のがんで、周囲のリンパ節転移の可能性が極めて低いが、内視鏡的治療の適応から外れる場合が対象となります。それには下記の如くの術式があります。
  ・幽門温存胃切除術
  ・胃分節切除術
  ・胃壁切除術 など

2)  内視鏡的治療
 

 内視鏡的粘膜切除法(EMR)は早期胃がんの治療法の一つです。以前より、早期胃がんの中でも病変が粘膜にとどまっていて、大きさが2センチ以下で、胃がんの組織型が分化型で、がんの部分に潰瘍がない、という条件が満たされればリンパ節転移の可能性が極めて低いとされていましたので、この治療で治癒させることが可能です。

 近年前述の条件を満たさない病変でもリンパ節転移の危険が少ない病変、たとえば粘膜内の病変で病変部に潰瘍がなければ2センチ以上の大きさでも内視鏡的治療で治癒させることが可能となりました。しかし、病変部が完全に粘膜内にとどまっているかどうかを正確に判定するためには病変を一塊で切除すること(一括切除)が必要です。従来のEMRという方法では2センチ以下の病変を一括切除するのが限界でした。

 そこで、数年前から全国の多くの施設で導入されている方法が内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)です。この治療法であれば内視鏡専用の高周波ナイフ(当院では主にITナイフを採用)を使用して、確実に病変を一括切除することが十分可能になりました。このため、病変が完全にとりきれているかどうかを顕微鏡で検査(病理検査)して、正確に判定することも可能になりました。その結果、完全に切除できていれば経過観察とし、再発や転移の可能性がある病変であれば適切な追加治療を選択することが可能になりました。

 2004年度よりESDを本格的に導入し、現在までに300例以上の胃ESDを行っております(2007年度は75例)。

 導入当初は多くの施設で偶発症(術後出血、穿孔)が問題でしたが、当院では慎重に手技を行うことや、食事開始前に内視鏡で治療部潰瘍の確認を行うことによって、偶発症予防対策を行っています。入院はクリニカルパスを導入しており、治療後入院期間は6日間です。

 長期的な成績に関してはまだ不明な点もありますが、治癒切除と判定されている方に関しては遺残再発はゼロです。しかし、胃がんの場合、治療した部位とは異なる場所に新たにがんが発見される場合も少なくなく、定期的な内視鏡検査は非常に重要で、退院後2カ月以内に一度、その後は病変部の状態に応じて半年から1年ごとの内視鏡検査を行っています。

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II 化学療法(抗がん剤による治療)

 現在の抗がん剤による治療は、胃の病巣(原発巣)あるいはリンパ節、肝、腹膜などへの転移(転移巣)に対し、縮小させたり、増殖を抑制したりする効果が認められています。その適用は、次のごとく三つに大別されます。

1) 術後補助化学療法

 これは、術後の再発予防を期待して行われる治療のことです。
  昨年、ある抗がん剤を対象に全国規模で検討した結果、胃がんの進み具合(ステージ)がII,IIIA,IIIBの方で根治切除が行われた方に、再発予防としての一定の効果があることが明らかになりました。原則として、術後6週間以内から開始し、1年間継続します。

2) がんの再発または切除不能ながんの場合
   多くは2種類の抗がん剤を同時に用いる多剤併用療法で治療しています。副作用の出方には個人差がありますので、最初の投与は入院の上で行っています。特に問題がなければそれ以後は外来通院で、専用の点滴治療室で行っています。この治療を受けられた方の約50%に有効性を確認しています。しかし、完全にがんが消滅することはきわめて稀であることから、この治療方法は完治を目指すものではなく延命を目的とした治療方法といえます。
3) 術前化学療法
 

 本治療は、「化学療法によってまず腫瘍の縮小や微小転移(目に見えない転移)の消滅を図り、ついで遺残した原発巣や転移巣を切除する集学的治療(複数の治療方法を併用して行う治療)」のことをいいます。この治療の利点は、@術後に化学療法を行うよりも術前のほうが体力的に耐えやすい A手術に伴う腫瘍周囲の血管の構築の乱れがないので抗がん剤が腫瘍に到達しやすい B切除不能といわれたがんでも切除できるようになることがある、などが挙げられます。
  一方、もし抗がん剤が効かなければその間、腫瘍が急速に大きくなり手術のタイミングを失ってしまう危険性も否定できませんので、慎重に適応を決めて行う必要があります。まだ歴史が浅く、これからの治療方法ですが、今までならばあきらめていたような状況でも完治することが経験されていますので、現在取り組んでいます。

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III 当院での治療成績
1) ステージ別5年累積生存率
〈1991−1998年の総合成績〉(表1)
表1 Stage別5年累積生存率
1)-1 治癒切除例におけるステージ別5年累積生存率
(1999年ステージ分類改定後、1999−2001年の成績)
 

StageIA・・・99%
StageIB・・・93%
StageII・・・73%
StageIIIA・・・58%
StageIIIB・・・29%
StageIV・・・13%

 
2) 合併症
 

 開腹(または腹腔鏡下)手術後合併症には、肺炎・脳梗塞・心筋梗塞などいくつかの疾患が挙げられますが、最近の注目されているのは、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)という疾患です。これは下肢の深いところにある静脈内に血の塊(血栓)が作られ、それが血液の流れにのって移動し、心臓を経由して、肺の血管を詰めてしまい、著しい酸素欠乏状態を引きお越し、約50%の方は命を落とされる重大な疾患です。もともと発生頻度は少なかったのですが、食生活の欧米化による肥満などのために増加しており、最近では肥満がなくても起こりうる疾患としてとらえられています。胃がんの術後にも発症する危険性があり、注意が必要です。当院では麻酔科とも協力し、本症の発生危険度を個別に測定しそれに見合った術前・術中・術後管理を行っています。特に術前から下肢静脈内に血栓がある方は、本疾患の発生を予防するために放射線科と協力して、IVCフィルターというものを術前に体内に留置することもあります。

*手術関連死(手術後30日以内の死亡)頻度 1人/2年間

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IV 退院後のフォローアップ

 退院後は、かかりつけ医と協力しながら診療に当たります。
 年に数回の血液検査や画像検査(超音波検査、CT検査など)、年に1回の上部消化管内視鏡検査を行い、再発の有無について定期的にチェックします。この外来でのフォローアップは5年間が一つの目安になります。それまでは調子が良くてもきちんと通院することが大切です。
  また、一度がんにかかられた方は、他の内臓に新たながんができる可能性が、今までにがんにかかられたことがない方より若干高いといわれています。このため5年間再発なく無事にすぎたとしても、年に1回は検診や人間ドックを利用して、全身のチェックをしていきましょう。特に胃がんの場合は、食道・残胃・肺・大腸・前立腺(女性では子宮・卵巣)のチェックはとても大切です。当院では検診センターにて人間ドックを行っておりますので、活用していただければより安心です。

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